インタビュー
2022.08.18
eスポーツを横須賀の文化に【後編】 VALORANT大会で広がる地域の認知と若者のチャンス
- 大会/イベント
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横須賀の名を世に広めるべく過去にさまざまな施策を講じてきた横須賀市観光課ですが、新たに始めたeスポーツというコンテンツはこれまでにない苦労を強いられたとか。一方で今年で3回めとなるeスポーツ大会は過去大会から得られた知見がいかんなく発揮されたものに。後編ではYokosuka e-Sports Projectの全貌に迫ります。
行政が出てきたコンテンツは終わりだと言われたくない
実際に市のプロモーション活動としてeスポーツの取り組みを始めてみて、横須賀市 文化スポーツ観光部 観光課 サブカルチャー担当 主任の関山さんはコロナの影響を受けなかったことの良さを改めて感じたといいます。「観光課ってどの自治体でも同じなんですが、コロナによってダメージを受けたり事業がストップしたりで、悪影響があるんですが、その中で影響が少ないeスポーツをコロナに入る前に始められたのはよかったです」と語ります。
一方で、eスポーツは新たな事業であるだけに他の事業よりも気を使う場面も多いのだとか。横須賀市 文化スポーツ観光部 観光課のサブカルチャー担当でウェブデザイナーの小山田さんは「流行り廃りが早かったり、コアなファンは世界観をすごい大切にする人が多いので、業界に精通している会社さんに話を聞いたり、配信者さんの動画などで勉強しました。大会の実況解説やサイトデザイン、ポスターなど、細かいところですが、すごく気を付けています」と語ります。「行政が出てきたらこのコンテンツは終わりだって言われたくなかったんですよね」という言葉からは運営陣の本気度が伺えます。
今後、同市では現在学校に設置している機材のスペックアップも視野に入れています。小山田さんは「3年も過ぎるとグラフィックボードとかも古くなってくるので変えたいと思っています」と意気込みます。財源については企業版ふるさと納税などを活用する見込みだとか。高等学校のeスポーツ活動の環境を継続してサポートする体制を整えていく考えです。
また、同市では“eスポーツを文化として根付かせる”ため、今後はより取り組みを拡充していく方針だとか。高等学校を主軸にしつつ、小中学生や高齢者といった年齢層までアプローチを広げ、地元の企業がスポンサーとして協力してもらえるような環境づくりを目指します。直近では、高校生に対する生徒指導プログラムを模索しているとか。全国のeスポーツ部では顧問自身が競技タイトルをプレーしていることが少ないことから、技術指導に課題を感じるケースが見受けられます。こういった課題に対して、eスポーツに取り組む生徒のスキルアップにつながる活動になりそうです。
その大会は誰のため?何のため?
Yokosuka e-Sports Projectの目玉は高等学校への支援制度だけではありません。高校生対象のeスポーツ大会「Yokosuka e-Sports CUP」も注目ポイントです。同大会は2020年に初回を開催し、今年で第3回を迎えます。初回ではロケットリーグを競技タイトルに採用し、横須賀市内の高校生を対象として開催。21年の第2回ではVALORANTに競技タイトルを変更し、全国の高校生へと対象者を拡大しました。いずれも、オンラインで開催しており、第2回ではリザーブも含め総勢200人以上の選手が参加したといいます。
同大会の大きな特徴は、やはり競技タイトルにVALORANTを採用していることでしょう。高校生を対象とした大会で採用されることが多いシューティングジャンルとしてはフォートナイトが有名です。一方のVALORANTは非常に競技性が高いタイトルでありつつも、銃を撃つ描写がはっきりしており、PCでしかプレーできないことなどがハードルになります。これについて関山さんは「銃を撃つタイトルであるだけにいろんな懸念点があったんですが、それらをちゃんと整理して、それ以上の可能性があるんだと考え採用しました」と語ります。
小山田さんは「もともとこのプロジェクトでは高性能PCを貸与して若い可能性を広げていくことを目的としていたのでPCタイトルであることは問題ではありませんでした。そこでフォートナイトやApex Legendsなどと比較して、競技シーンを見据えた開発をしていたことや、海外に進出しやすいタイトルであることを理由に採用しました」と説明します。最終的には横須賀市を足掛かりに世界に羽ばたく選手を生み出したいという考えもあり、世界大会の規模の大きさもタイトルを採用する大きなの要素になったのだといいます。
第2回大会で採用タイトルを変更したことで、横須賀市では初回大会と比較して“なんのため”の“誰のため”の大会であるかという視点から生まれたのだとか。関山さんは「ロケットリーグとVALORANTではロケットリーグの方が見やすいですよね。実際、VALORANTを見てても分からないまま終わってしまう人も多かったはずですが、結果的にSNSなどで広く発信され多くの若者たちにPRできたと感じました」と振り返ります。大会を見ても理解できない人がいたとしても、それでも構わない、むしろそのタイトルのプレイヤーやファンといった人たちに寄り添った大会にすることで、本来の目的である横須賀市の存在を彼らに認知してもらえるのです。
小山田さんは「今はプレイヤーじゃない人を取り込むより前の段階で、既にプレーしている人たちに横須賀を注目してもらう段階なんだと思います。正直、初回はゲームを知らない人のためにやってしまっていたところがありました。現時点では、広く浅く好きになってもらうより、少数のコアなファンに横須賀すげえなって言ってもらいたいですね」と語ります。
初めてVALORANTを採用した第2回は21年10月に開催しましたが、その後プロチームであるZETA DIVISIONが世界大会で3位を獲得するなどVALORANTは国内で大きく注目を集めています。時勢の影響もあり、同大会も認知が広がりつつあります。第3回も開催予定で、予選を8月20日に、決勝を9月3日に実施する予定。新型コロナウイルスの影響もあってどちらもオンライン開催です。
今後も、横須賀市ではeスポーツ事業の一環として同大会を継続して開催していく方針です。将来的にはオフライン開催も視野に入れているとか。小山田さんは「市内の若者たちには気軽に参加して欲しい」と呼びかけます。同大会は“高校生対象”と銘打っていますが、実際は対象の年齢であれば参加可能。学校に通っていなくともゲームに自信があるという人はぜひ参加を検討してみましょう。関山さんは「ゲームをコミュニケーションツールにしてもらって、いろんなところに出るきっかけにしてほしいです」と語ります。地元のPRとして始まった横須賀市のeスポーツ事業ですが、若者たちの新たな活躍の場としても発展しています。
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eスポーツを横須賀の文化に【前編】 市主導の観光プロジェクトで地域に根付く高校eスポーツ
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■外部リンク
Yokosuka e-Sports Project=https://www.cocoyoko.net/e-sports
横須賀市=https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/
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