インタビュー

2024.03.27

eスポーツ部を広める活動にも注目!飛龍高校eスポーツ部 NHECロケリ部門準優勝チームに感想や目標を聞いてみた!

記事をシェア
エックス
フェイスブック
ライン

 eスポーツを通じて仲間とともに成長することを目的とした高校生のためのeスポーツ選手権大会「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権(NHEC)」の決勝大会が2月に行われました。中でも会場の熱気が凄まじかったのがロケットリーグ(ロケリ)部門。ゴールやファインプレーのたびにどよめきや歓声が上がり、まさにオフライン開催の醍醐味を感じさせるような盛り上がりを見せていました。そんな中で編集部が注目したのは同部門で準優勝を果たした全日制の飛龍高等学校、チーム「HEST:Majide」の4人。大会に参加してみた感想などについて話を聞いてみました。(取材日:2月29日 / 取材・文:寺澤 克)

「HEST:Majide」の4人。
左からitochan選手、Ruby選手、skyblue選手、haru選手


 取材に対応してくれたのは、チームのリーダーを務めるitochan選手、Ruby選手、haru選手、skyblue選手の4人。全員高校3年生とのことで、これが最後の大会だったそうです(以下敬称略)。

やっぱり悔しい! けど最後に1点決めて力を出し切れた

──準優勝という結果でしたが、今の気持ちを教えてください。

haru そうですね。やっぱり「悔しいいい!」って思いはあるんですが、思い切り全力でプレーして楽しめたので悔いはありません!

Ruby 前回の第5回 全国高校eスポーツ選手権では決勝に進むことができなかったので、それを考えると良かったのかなと思います。

itochan 2位となって悔しい気持ちはもちろんあります。しかし最後の最後で3人のチームワークを発揮して点をもぎ取れた、そしてそれを観客の皆さんに見せられたことが良かったと思います。

skyblue 今回はサポートメインとして参加しましたが、3人の活躍を間近で見られたことは良い思い出ですね。

──決勝はBO5のところ3戦で決着がつきましたが、最後の3戦目はほかの2戦に比べて点差が少なく拮抗していました。最終戦中盤、決勝で唯一返した1点について優勝したN高に聞いてみると「あれが飛龍の本来の実力だったと思う」という回答がありました。やはり全国決勝ということで緊張していたんですか。

haru 準決勝の阿南高専戦の時もそうだったんですけど、決勝でも1点取ったらRuby選手が「なんかやっと緊張解けたわ」って話す場面もあったので、多少は緊張があったと思います。

──1点決めた後、それまで以上にharu選手の声かけに勢いがついたように思います。やっぱりインゲームリーダーはharuさんなんですか。

haru いや、勝手に私が声を出しています(笑)。リーグ・オブ・レジェンド(LoL)もプレーしていたのですが、そっちも声出しはかなり重要なんですよね。だからその癖が抜けてないんです。何言っているかわかんないって言われるんですけど、それでも声出しはやっています(笑)。

haru選手はベストフェアプレー賞にも選ばれた


──声かけ担当(インゲームリーダー=IGL)がほかにいるのにharu選手が声を張ったら、喧嘩になるようなことはないんですか。

haru ないですね(笑)。あるとすれば、Ruby選手とitochan選手がよくケンカします。まあ意見の食い違いってやつですけど。

──そんな中で皆さんどのように連携を取っているんですか。

haru 全員の「共通理解」ってやつですかね。

Ruby いつどこに誰がいるのかっていうのを3人が把握しているということですね。声掛けももちろんしますけど、お互いを信用しているって感じです。

──決勝で決めた1点は3人の連携が光ってドラマチックでしたが、フォーメーションやそれぞれの得意分野はありますか。

haru だれが囲む、点を決めるというのはザックリとはありますけど、基本的に誰でもパスできるし、シュートできるし、対応力はあります。ただ、私は空中がすごい苦手です(笑)。

itochan 僕は苦手なところはないかな。

haru フォロー苦手じゃん(笑)! 逆に私はフォロー得意。最近は練習してみんな早くなったね。

決勝戦でN高「N小町」から1点をもぎ取ったシーン


──ではitochan選手の得意なプレーは?

itochan シュートもパスもオールラウンドに得意ですね。

──ではRuby選手は?

Ruby あんまり思いつかないですけど、パスとか。

haru でも「そこから行くんだ」みたいなシュートたくさんするじゃん。

──届かないと思われるような高いボールにも届いてしまうと。結構トリッキーなプレーもできるわけですね。

Ruby そんな感じです。

haru リアルでも身長高いもんね(※Ruby選手は身長185cm)。

一同 (笑)。

──skyblue選手はどうですか。

skyblue どれが一番という感じではないですが、強いて言うなら僕はキーパーが得意ですね。ピッチの半分からこっちに来たボールは返すような感じです。逆に攻撃は苦手ですね。

常勝校 N高を意識し格上チームとスクリムを重ねる RLCS出場者とも練習を!?

──大会に向けて、練習面やメンタル面など、どんなことを意識してきたんですか。

itochan 今回優勝したN高。彼らとはいずれ戦うことになるというのはわかっていたので、チーム全体としては、週に1回くらい格上のチームと練習試合をするようにしていました。そのリプレイをコーチと一緒に確認しながら課題出しなどを行うというのを繰り返していました。

──格上のチームというのはどんなつながりで知り合ったのですか。

haru 私の友だちに「Rocket League Championship Series」(RLCS)に出場するほどの実力がある人がいて、それでお願いをしてスクリムを組ませてもらいました。

──RLCSってロケリの世界大会じゃないですか。そんな知り合いがいるなんて、すごい環境なんですね。ほかにはどんな練習法が?

haru 練習法で言うと、上手い人たちのペアに私が入ることで、その時の自分の動きを間近で見てもらうという練習をしていました。彼らのアドバイスをもらいながら「ここ、飛ぶの遅い」とか自分の動きを客観的に分析していましたね。N高のレベルに追いつくために、上手い人の中でプレーして、その動きに慣れることができたのは大きかったなと思います。

──Ruby選手はどうですか。

Ruby 試合が近づいてきたあたりから、コンディションを調整するようにしました。大会までの期間が短くなると、新しいことを身に付けるとか成長するというのはなかなか難しい。だから知り合いとプライベートマッチをするとか、今までやってきたことを本番でしっかり発揮できるように、状態を万全に保つことを心がけました。

──コンディション維持は大切ですよね。skyblue選手はサポートメインとのことでしたがサポートするにあたりどんなことを大切にしていましたか。

skyblue やっぱり試合だけに集中してほしいという思いがあったので、大会当日は選手の荷物を僕が持ったり、顧問との伝令役を買って出たりしていました。少しでも選手の負担を和らげるというのがサポートの役目だと思いますので。

インタビューや撮影、観客たちの応援ボードなどオフラインならではの良さが際立つ大会だった

──今大会に参加した感想を教えてください。

haru こういった大規模な大会だと、インタビューがあったり、決勝大会まで進むと撮影があったりするのが私はすごく好きです。高校生ってやっぱりそういう機会ないじゃないですか。カメラマンがたくさん来て「こうやってポーズとってね」とか言われるようなことも。リハーサルとかの準備も結構楽しみです。

──苦手だと言う人はよくいますが、好きというのは珍しいですね。撮影する側からすれば、ありがたいことですね(笑)。皆さんもこういったインタビューとかは得意なんですか。

Ruby 別に得意じゃないですけど、好きな方です。聞かれる方は、ファンサービスもいっぱいできますし(笑)。

──itochan選手は大会中、ステージ上でコメントする機会が多く大変そうでしたが、内容はかなり練られていましたね。

itochan それは、普段から部活でそういう指導をしているからなんですかね。

──コメント力を鍛える練習ということですか。

itochan はい。部活の終わりに一言話す機会を設けていて、毎日何かしらしゃべっているんですよ。

──それは「今日はどうだった?」みたいな振り返りの意味で?

itochan そうですね。日々の活動のこととか。

haru あとは「もうすぐテストがあるのでしっかり勉強しましょう」とか「風邪がはやっているので体調管理しっかりしましょう」とか、そういう日々の学校生活の話もあります。

──ほかに大会について何か心に残ったことや気になったことはありますか。次回大会に対する要望とかでも構いません。

haru 演出が良かった!煙がたくさんたかれたり、応援する人たちにはペンライトやボードが配られたり。ああいうのはすごく応援されているという感じが伝わってきてうれしくなりました。

itochan 今回、決勝はトーナメント戦で負けたら終わりでした。でも今度は、予選を勝ち上がったチームでリーグ戦ができたら面白んじゃないかって思います。そうするとどのチームも何試合かプレーできるので、オフラインで試合をしたことないチームも経験を積めますし、何より見ている側も試合数が増えて盛り上がりそうですよね。

年々入学者数は減少 入部者増やすため小中学校へ赴きeスポーツ部勧誘活動を始めた 

──部活の活動内容について教えてください。以前(2022年)の取材では二つのチームに分かれて活動していたと聞きました。

itochan 実はですね、2023年から少し活動時間を変えまして……。以前は毎日、本気で練習しようという方針でガンガン活動していたんですけど、それだとついてこられない人が出てきてしまいまして……。

↓飛龍高校の過去の取材記事はコチラから!!↓

部活動とは辛くて楽しいもの 本気の文武両道で目指す“勝ちにいくeスポーツ” 飛龍高等学校
https://esports.bcnretail.com/highschool/highschool-tanbou/220410_000560.html

──なるほど、で少し方針転換したと。

itochan はい。今年度からはみんなで楽しんで練習しようというのをテーマにしていました。まずは楽しむことからはじめて、そこに結果もついてくればいいなと。それで月曜日は自主練、火~金曜日で全体練習に取り組んでいました。

──その結果はどうですか。部員の数は増えましたか。

haru 今は8人です。今年度は5~6人が入ってきたんですけど、今は2人しか新入部員が残っていなくて……。卒業してわたしたちが抜けてしまうと部員4人で新年度を迎えることになってしまうんです。

──そうなると後継者という点が問題になりそうですね。部員を増やす試みはなにかやってきましたか。

haru 私たちeスポーツ部が独自に近隣の中学校などに出向いて、eスポーツ体験会を開いています。部活動の実績とか、こういったゲームをプレーして活動していますとか、説明して勧誘しています。最近は小学校に行って勧誘しました。私たちは卒業式の練習、授業が終わった後だったんですが、後輩たちもわざわざ授業を抜け出して手伝いに来てくれました。

近隣の学校に訪問してeスポーツ部を紹介している
(写真:飛龍高校eスポーツ部提供)


──小中学校に行こうというのは、なにかきっかけがあったんですか。

haru 飛龍高校に入学する生徒の数自体が年々減っていて、「こんなんじゃ、うちの部活に人が来なくなっちゃうな」という危機感がありました。だから顧問の先生から、実際に中学校に訪問しようって話が出てきて、それで私たちも一緒にeスポーツを布教しよう! と思って始めました。

──実際に広める活動をしてみて、小中学生たちの雰囲気はどうですか。

haru 結構盛り上がりますね。この前、小学6年生の生徒たちに話をしに行ったときは、プレーしている人を囲んでみんなで応援したり、「あそこ行けるぞ」みたいな掛け声なんかも飛び交ったりして、みんな和気あいあいとしていましたね。それで「3年後も学校でプレーしたかったらぜひ入学してね」なんて話をしました。

──本当に将来の新入生になってくれると良いですね。

4人は別々の道へ 今後もeスポーツや部活動にも携わりたい

──最後に、皆さんはもうすぐ高校を卒業されますが、これからの進路や目標、夢などあれば教えてください。

haru 私は専門学校への進学が決まっています。ただ「ロケットリーグを一般のスポーツへ」っていう目標をもっています。ロケリが野球やサッカーのようなスポーツと同じ土俵に立てるように、今後もeスポーツの活動、大会の運営とかに携わりたいと思っています。今はα-Gaming(@a_gaming_of)という団体に所属して、ロケットリーグの大会を開催しています。

先日行われたα-CUP#2。
α-Gamingでharu選手は精力的に活動を続けている
(α-Gaming 公式noteから引用。)


itochan 僕は大学に進学します。高校は2月から自由登校期間となっていて、今はここでコーチとして活動しています。今後も大学生活を送りながらコーチを続け、この部活動に関わっていこうと思っています。あと進学先は国際学部なので、やっぱり英語を勉強して話せるようになりたいです。海外のeスポーツの盛り上がりはすごいですし、競技シーンを見るのも好きなので、その熱気を英語のまま感じられたらと思います。

Ruby 僕は冷蔵庫やエアコン、自動販売機などの機器を冷やす機械を製造する工場に就職します。言いたいことはもう2人に言われちゃったんですけど、僕もコーチとしてこの部活に今後も関わって、後輩たちをもっと強く、大会で上位を狙えるようにサポートしていきたいと思っています。

skyblue 僕は自動車工業科で学んでいたので、自動車整備工場に就職します。学校の実習では自動車のエンジンを一度下ろして組み直すなど、実践的なことを学んできたので、自動車整備の仕事をします。僕もたまにここに顔を出し、仕事が休みなら行事とかにも協力していきたいと考えています。

──今後も部活動に何らかの形で関わっていくのですね。今回は取材に対応していただき、ありがとうございました!


 皆さんそれぞれ別の道に進むようですが、部活動で培ったことが生かされることを願うばかりです。途中itochan選手が「リーグ戦にしてみたら面白いんじゃないか」と言っていたのが、個人的にはナイスアイデアだと思いました。なかなかオフラインで試合ができる環境の少ないeスポーツですから、有観客でプレーできる経験をたくさん積めると競技全体のレベルアップにもつながりそうですね。次の大会でも飛龍高校eスポーツ部の活躍がオフライン会場で見られるのか、今後に期待しましょう。

関連記事

部活動とは辛くて楽しいもの 本気の文武両道で目指す“勝ちにいくeスポーツ” 飛龍高等学校

ロケットリーグ高校日本一はどこだ! 全日本高校eスポーツ選手権 決勝レポート

奥平大兼さんと平岩康佑さんが対談! 日本初eスポーツ劇映画「PLAY!」撮影エピソードや2人で大会観戦した思い出を語る

外部リンク

飛龍高等学校 ホームページ
https://hiryu.ed.jp/

部活紹介

おすすめ関連記事

eスポーツ部の活動日誌

新着記事

ゲーミングデバイス情報

  

ゲーミングデバイス情報

新製品 レビュー 部活紹介 eスポーツ部の活動日誌