インタビュー
2024.07.02
当事者から見る大学eスポーツの現状は? 目指すはeスポーツ界の箱根駅伝!? esports campus summit代表 出島太智さんに聞く 後編
- eスポーツ団体
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2023年9月に立ち上がった大学eスポーツサークルでつくるコミュニティ「esports campus summit」、通称ecs。24年3月にはVALORANTの大学対抗戦「VALORANT Campus Summit」を開催。前半ではecsの創設経緯や活動内容について話を聞きました。後半では今後の団体の展開や近年の大学eスポーツシーンの現状について、同団体代表で早稲田大学esportsサークル元副幹事長の出島 太智さんに引き続きインタビューしました。(取材日:2024年5月14日)(取材/文:寺澤 克)
【この記事の前編】
eスポーツ早慶戦や大学生VALORANT大会を主催 esports campus summitとは? 代表 出島太智さんに聞く 前編
https://esports.bcnretail.com/column-interview/interview/240701_005333.html
近年LoLやVALORANTに取り組むサークルが増加 中にはオフラインを軸にするケースも
──そもそもの話になるのですが、大学のeスポーツシーンの現状について、当事者でもある出島さんはどのような印象を持っていますか。
出島さん(以下敬称略) あくまでサークルやプレイヤーからの視点ですが、遊びとしてeスポーツに親しむ以上に競技として取り組む、そんな土壌がここ1~2年で出来上がってきたところでしょうか。
それは、各大学サークルがLoLやVALORANTといったメジャータイトルに取り組むケースが増えてきたのが要因の一つかと思います。
あとは筑波大学や近畿大学、それから日本大学生産工学部などの一部大学がeスポーツを学校でプレーする環境を整え始めていることも大きいです。
普通のサークルはオフラインで集まって飲み会を開いたり遊んだりします。でもeスポーツって、家にPCとオンライン環境があれば、わざわざ外に出てゲームをしよう、ということにはなりませんよね。それはそれで良い点もたくさんあるのですが、サークルとして居場所を提供できるかといわれると難しいでしょう。
そうした中でも大学当局側が働きかけを行うケースが増えていて、この点も踏まえれば、大学eスポーツの発展という意味では期待が持てると考えています。
──確かに、オンラインで事足りるのがeスポーツの良いところでもありますからね。ちなみに早稲田大学esportsサークル(WeC)の活動についてはどうでしょう。
出島 WeCが目指しているのは「サークルを居場所にする」ということなんです。サークルって、先輩後輩がいて、大学内での一つの居場所という機能があるじゃないですか。それをeスポーツサークルとして作っていきたい。そんなビジョンを描きながら活動しています。だからオフラインでのつながりも大切にしているんです。
2023年の時点では150人以上がDiscordサーバーに加入しました。ゲーム別にボイスチャットなどで集まってプレーを楽しむこともありますが、歓迎会はもちろん、50人ほど集まってApex Legendsのオフラインカスタムを開催したこともあります。その時は、先に倒れた人がまだ生き残っている人のモニターの前に集まって、観戦を楽しんでいたりして、昔のゲームセンターのような雰囲気を感じられました。
都内ならeスポーツカフェを拠点にできる 大学公認難しいのは活動実態の判定?
──活動場所についてはどうでしょうか。公認サークルであれば部室がありますが。
出島 都内に限定すれば、eスポーツカフェなど、練習や大人数が集まれる活動場所は充実しているので、部室みたいなものが必要不可欠というわけではないですね。あくまで個人的な意見ですが。
例えばWeCは高田馬場にある「eSPORTS CAFE AIM」を利用することが多いです。各大学のサークルでは、例えば東京大学esportsサークルは「渋谷eスタジアム」を部室として定期利用していたり、日本大学e-sportsサークルは川崎の「e-sportscafe LIG」によく集まっていたり、決まった活動場所を設けていますね。部室でなくてもオフラインで練習できる場所があれば、選手として活動する大学生にとっては、便利かなとも思います。
──なるほど。公認サークルというと、eスポーツのサークルは公認が少ない印象を受けます。そのあたりは、どういった事情があるんでしょうか。
出島 そこも大学によって異なる部分がありますが、早稲田大学の場合は、活動実態を証明するための(オフラインでの)活動記録を取りづらいという点が一つあると思います。オンラインでの活動は実態にカウントできないので、難しいところなんです。
ただWeCは、昨年(2023年)かなり充実した活動ができたので、来年以降で公認が取れれば良いかなと思っています。僕はもう卒業してしまうので後輩に託すことになりますが(笑)。
本気で打ち込むプレイヤーに貴重な経験を 「決勝観ました」イベント後には入部希望者
──3月にecs主催で行ったVALORANT Campus Summit。出島さん自身は、イベントを終えてどうでしたか。
出島 今回は12校が参加しました。これほど多くの大学を絡めたイベントは、運営に慣れている僕ですら初めてで、どれも規模や背景が異なるサークルでしたから、どうやって一つの目標に向かって協力できるのか、そこを探るのが結構大変だったかなと思います。
出島 でも、オフラインだと楽しそうにプレーする選手の顔を見られて気持ちがいいなと毎回大会を運営していて思います。参加チームから「やっぱりオンラインよりも楽しい」と言葉をかけてもらえてうれしかったです。初めて「eスポーツ大会を運営したい」と思った時のことを思い出しました。
──出島さんはどういった思いがあってeスポーツイベントを運営しようと考えたのですか。
出島 元々、小中高でスポーツが得意じゃなかったんです。で、大学に進学するとやっぱり六大学だから、野球を見に行こうとなるんですよね。球場ではピッチャーがマウンドで1球1球投げ込みます。それをその場の全員が注目して見ている。そんな経験ってピッチャーじゃないとなかなかできないですし、自分のプレーで観客が沸くって人生でも非常に大きな経験になりますよね。
もちろん血のにじむような努力をしたからこそ、マウンドに立つことができる。でもその時に「ゲームに真面目に取り組んでいる人もいるんだから、そっちが注目されても良いのではないか」と思ったんです。
そして僕は、いろんなタイトルはプレーするんですけど、どれも頭打ちになっちゃうことが多くて、プレイヤースキルも飛び抜けているとは言えない。だったら学生のプレイヤーたちのためにオフライン大会を開催して、何か記憶に残るような経験をさせてあげたいという思いが芽生えてきたんですよね。今回のVALORANT Campus Summitでは、その経験を参加者に届けることができたのかなと思います。
──注目されながらプレーするのは貴重な経験にはなるでしょうね。開催後に反響はありましたか。
出島 まず、オフラインの決勝トーナメントでは明治大学、日本大学、慶應大学、大東文化大学の4大学で競ったんですけど、どこの大学も「決勝を見ました」と言って入部してくれる人が現れたそうです。選手だけじゃなく「運営やってみたくなりました」って入部する人もいたようで、一番うれしかったですね。憧れるような大会をつくることができて、主催者冥利に尽きます。
課題はいかにして注目してもらうか 協賛金ではOBが協力するというケースも
──入部希望者も現れた。では大成功と言えるんじゃないですか。
出島 うーん……大成功ではあるんですけど、いかに認知してもらうかというマーケティングの部分は難しさを感じました。見よう見まねで営業などもやってはみたんですけど、やっぱり上手く告知を打ったりするのは、大人の力が必要だったのかなって。そこが現状一番の課題だと思います。身内にすごく刺さっていい大会にはなったけど、今度はその熱狂を外にどうやって届けるのか。そこが今後考えるべきところですね。
──営業にも取り組んだのですね。
出島 はい。例えばeスポーツ早慶戦の時は、企画書作って営業をかけて、協賛金を集めるところからすべてやりました。会場の演出面などは会場側とも協力して、eスポーツ関係の会社にOBがいたので助けてもらったこともありましたね。
協賛を募集しているときには、つきぢ神楽寿司さんというお寿司屋さんにコンタクトが取れました。慶應大学のOBの方が経営されていて「慶應が頑張ってるんだったら支援するよ」という形で快く引き受けてくれました。ビジネスに重点を置くのではなくて純粋に応援したいというその気持ちがありがたかったですね。
──アパレルのBAITも協賛していましたね。
出島 運営をしていて「チーム感がほしい」とは思っていたので、運営Tシャツを作ってもらいました。BAITさんは、ノベルティを来場者にプレゼントするなど、eスポーツ早慶戦、VALORANT Campus Summit、両方で協力してもらいました。
目指すはeスポーツ界の箱根駅伝 目まぐるしく変わるネットトレンドに柔軟に対応したい
──最後に、ecsの今後の目標などを教えてください。
出島 まず、VALORANT Campus Summitを「eスポーツ界の箱根駅伝にする」という目標があります。あくまでイメージですけど、「毎年この時期はこれだよね」と学生だけでなく世間からもそう思われるイベントにしていけたらいいなと思います。
さらに今後のことを言うと、後輩へのメッセージみたいになってしまうんですが、「今の大学eスポーツサークルって何がほしいんだっけ」ということを常に追い求めながら、活動していきたいです。
eスポーツに限らず、ネットの文化って、はやり廃りが激しいし、特にコロナが落ち着いてからは、情勢はすごいスピードで変わっています。凝り固まった考えを団体として持つのではなくて、いろいろな大学がコミュニティに参加しているからこそ、「良い」と思ったらどんなものでも取り入れて、今いる人たちの「最大限」を出していくのが理想ですね。今後、僕たちの取り組みを引き継ぐ後輩たちもそうした意識を大切にして日々活動してほしいと思います。
──「eスポーツ界の箱根駅伝」って面白そうですね!今回はありがとうございました!
プレイヤーの目標となるようなイベントを企画し、大学eスポーツシーンを盛り上げる、そんな思いから始まったesports campus summit。加盟サークルは関東圏に限らず東西から集まり現在は17団体となっています。大学生だけでなく世間一般からも「eスポーツ界の箱根駅伝」と認められるようなイベントを作り出せるのか、今後の活動にも注目しましょう。
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外部リンク
esports campus summit X公式アカウント
https://x.com/ecsummit000
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