インタビュー

2024.08.27

「eスポーツは所詮、遊びの延長」をひっくり返す! STAGE:0統括プロデューサーが語る大会のあゆみとこれから

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 今年で6回目を数える高校生向けeスポーツ大会「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2024」(STAGE:0)の全国大会が8月10~12日に六本木グランドタワーにて開催されました。

 今回のSTAGE:0は5タイトル6競技、全国の参加人数は延べ7692人に及びます。規模からみても、もはや高校生にとってなくてはならないイベントのひとつです。そんなSTAGE:0の仕掛け人のひとりであるテレビ東京の藤平晋太郎さんに、同大会を始めた経緯や目的、今後の運営についての話を聞いてきました。

今年で6回目を数える高校生向けeスポーツ大会
「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2024」
(STAGE:0)の全国大会が
8月10~12日に六本木グランドタワーにて開催されました。


取材・文・写真/岡安 学 編集/南雲 亮平

立ち上げから携わるSTAGE:0統括プロデューサー

──まず、藤平さんのSTAGE:0での立場と役割を教えてください。

藤平晋太郎さん(以下、敬称略) STAGE:0に関しては正式に肩書きのようなものは決まっていないのですが、便宜上、STAGE:0統括プロデューサーとなっています。STAGE:0はテレビ東京と電通の共同事業として実施しており、私はテレビ東京の全体統括をしています。STAGE:0が開始した初年度の2019年、と言うより、その準備段階から担当しています。 

──では、立ち上げからずっと関わっているわけですね。STAGE:0と言うと、高校生向けのeスポーツイベントとして、青春やチームワークといった教育的観点を取り入れており、ほかのeスポーツイベントとは違う目的や意義があると思います。その点についてはどのように考えていますか。

藤平 STAGE:0での採用タイトルは、選手たちの成長につながるタイトルを中心に選んでいます。その試みの一つが、基本的にチーム競技を採用していることです。実際に大会では5人や2人でチームを組んでいますね。そこで必要となってくるのが、作戦を練ったり、それを形にするためにコミュケーションを取ったり、といったチームの連携です。こうした体験を通じて、思いを共有する力が育まれると考えています。

 競技としては、ゲームをプレーするうえで求められる、情報の解析能力、瞬間的な判断力、行動を予測する力などが伸びていくと考えています。

準備段階からSTAGE:0に関わってきた藤平さん


──STAGE:0創設時の反響や、これまで続けてきた上でどのような成果があるのか教えてください。

藤平 STAGE:0を始めようとした当時は、世間や周囲に「ゲームはスポーツではない」という意見が多かったです。所詮は遊びの延長、たかがゲームといった評価でした。

 しかし、“eスポーツ”という概念が世間に姿を現しはじめ、世界的にも広がっていることがわかると、多少は追い風となる意見もちらほらみえはじめました。中には、将来的にはオリンピック競技になるという人もいました。ご存じの通り、2025年には国際オリンピック委員会の名のもとにサウジアラビアで「第1回オリンピックeスポーツ大会」が開催されるわけですが、STAGE:0立ち上げ当時は夢物語でした。

 あとは、ゲーム障害、ゲーム依存症の話もついて回っていて、無視できない状況でもありました。専門家や識者などさまざまな人の話を聞き、STAGE:0の下地を作っていきました。そのうえで、先ほどもお話したチーム競技を主要タイトルとして選びました。

 個人で戦うゲームだと選手の都合でプレーし続けることができるので、際限がなくなってしまう懸念がありました。学校と私生活の境目がなくなり、無秩序な状態になるのではないかと考えたんです。一方、チームで練習する必要があれば、開始と終わりのタイミングはある程度揃えるようになります。そういった、いろいろな状況や課題に一つひとつ向き合っていき、STAGE:0の開催にこぎ着けました。

 STAGE:0を開催した翌年には新型コロナ禍になり、フィジカルスポーツのイベント開催ができなくなりました。そんな中でもeスポーツはオンラインで対応できるので、ある種追い風となる状況にあったんです。STAGE:0もオンラインでの開催に切り替えたところ、参加者数は順調に増えていきました。

 新型コロナが5類感染症へ移行した後に開催されたアジア競技大会では、正式なメダル種目となりました。そして、先日のオリンピックeスポーツ大会の開催発表もあります。ほかのスポーツ、エンタテインメントが足踏みもしくは後退する中、eスポーツは成長できたわけです。

 ただ、STAGE:0としては辛抱の時期とも言えました。オフライン大会は初回のアンフィシアターだけで、その後はずっとオンライン大会。どうしてもオフライン大会に比べて熱気を感じにくいですし、勝利した選手同士が抱き合うような熱さも遠ざかりました。

 それでも多くの協賛社やパブリッシャー、スタッフが、継続することが重要だと考えていました。いつかやり続けて良かった、と言えると思って続けてきたんです。いまでは、STAGE:0に出場して良かったと言ってくれる生徒が多数います。それだけでもやり続けた甲斐はありますが、今後はそこから踏み込んで、さらなるメリットが出るような大会にすべきだと思っています。

 全国高等学校野球選手権大会、いわゆる夏の甲子園に出場することで、プロ野球の選手になれたり、社会人野球の選手として就職できたりなど、STAGE:0にもそういったメリットが出てくれば、より参加する意義のある大会になると考えています。

聖地化の重要性について語る藤平さん


──高校eスポーツを中心としたエコシステムの構築が必要ということですね。では、日本のeスポーツや高校生eスポーツの現状についてはどのようにみていますか。STAGE:0の初回に頃に比べ、eスポーツ部の存在が珍しいものではなくなるなど、状況は変わってきています。

藤平 eスポーツが発展するには、関わる人口をもっと増やす必要があります。プレイヤーだけでなく観戦勢も増やさないと。ゲームファンだけでなく、普段ゲームに触れていないような一般層がもっと観てくれるような状態が必要です。例えばオリンピックのように。そのためには、私たちメディアの取り上げ方や、競技の面白さの伝え方などに工夫や発展が必要です。

 また、夏の甲子園のように、夏にSTAGE:0があることを当たり前に感じてもらわないといけないと思います。その為には、開催地は聖地化する必要があると思っています。全国高等学校野球選手権の甲子園、全国高等学校ラグビーフットボール大会の花園、全国高等学校サッカー選手権大会の国立、といったところを目指したいです。

──聖地化については、初年度のアンフィシアターがSTAGE:0の拠点になるかと思いましたが、それ以降のオフラインではさまざまな場所での開催となりました。

藤平 初回のSTAGE:0の時は浦安市とも連携しており、雑談のなかではありますが、いずれはアンフィシアターをeスポーツの聖地にしましょう、といったような会話もありました。ただ、この構想はコロナ禍で大きく崩れてしまいました。今後、もう一度立て直していく必要があります。

第1回STAGE:0決勝大会の舞台となった
千葉県浦安市のアンフィシアター


 参加する学校の地域性というか、特色も出せたらとは思っています。屋外でプレーするスポーツだと、雪の降る地方では冬期の練習時間が少なくなるとか、そういった地域性は日本人にとって感情移入できる要因なんですよね。ただ、eスポーツはノーボーダーで、ネット環境さえ整っていればどこでも関係なく同条件で戦えてしまう、マッチングできてしまうので、感情移入する流れをどう組み立て行くのか、これから練っていく必要があると思っています。

 STAGE:0が甲子園のような存在になれたとき、一般層がチケットを購入し、観に来てくれるようになるんだと思います。それを目指していくには、テレビ局の力を発揮することがカギであると考えていますし、支援していきたいです。

 テレビ局としてできることを考えると、やはりグローバル化ですね。世界各国のアンダー18の人たちと対戦できるステージを作っていきたいです。さまざまな国でSTAGE:0のプラットフォームを使ってもらうのが理想で、各国独自のU18(18歳以下)の大会と連携し、その頂点に世界大会を開けたらいいですね。賛同してくれる国や地域と交流試合はしていきたいです。すでに何カ国かはオファーが来ている状態です。

──甲子園で対戦カードごとに観客の入れ替えが必要になるように、STAGE:0のような複合タイトルのイベントも観客の入れ替えなども必要になってくると思います。

藤平 そうですね、観客の入れ替えも課題です。現在STAGE:0で採用しているタイトルの中で『フォートナイト』はオンラインでの開催になっています。参加人数も多いですし、オフライン会場だと応援する人たちも多くなります。選手、観客の入れ替えを考えた時に、オンラインのシステムが最適だと判断しています。

 ほかのタイトルについても、会場をいくつか用意する必要があるかもしれません。もしくはコンベンションセンターのようにホールごとに試合会場を設けて、観客が自由に行き来できるようにするとか。Xゲームとか複合競技のイベントはすでにあり、そういったものを参考にしてきたいですね。音楽フェスとかもそうですね。


──最後にSTAGE:0の参加を目指す高校生、高校生になったらSTAGE:0への参加を夢見ている小中学生にメッセージをお願いします。

藤平 素晴らしい大会を一緒に作り上げて行きましょう。イベントを用意したので参加してください、というようなことは言いません。出演者や参加選手、観客など、さまざまな立場から要望を伝えて欲しいです。もっと多くの人が、もっと深くSTAGE:0に感情移入できるようしたいので、みなさんの力を貸してください。

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外部リンク

STAGE:0(ステージゼロ)|全国高校対抗eスポーツ大会 公式サイト
https://stage0.jp/

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