高校eスポーツ探訪

2022.06.19

eスポーツ部という居場所を作ってくれた学校へ賞金で恩を返したい 誠恵高等学校eスポーツコース成り上がり記【後編】

記事をシェア
エックス
フェイスブック
ライン

【高校eスポーツ探訪・10 後編】 今年度から正式にeスポーツ部として独立することとなった誠恵高等学校eスポーツコース。前編では顧問の杉浦先生にその活動を語っていただきました。ガッツあふれる生徒たちの情熱が高性能機材の導入を実現したとのことですが、実際のところどんな活動をしてきたのでしょうか? 生徒たちの言葉からは学校への深い感謝と新たにスタートしたeスポーツ部員としての向上心が感じ取れました。(取材・文/銭 君毅 注:2022年3月に取材)

生徒の千日詣りが体育教師と校長の胸を打つ 誠恵高等学校eスポーツコース成り上がり記【前編】

高槻燿太(下段左):新2年生、部長。中学時代は野球部に所属。得意タイトルはApex Legends(APEX)で最高ランクはマスター
岩田葵(下段右):新2年生。中学時代は空手部に所属。得意タイトルはAPEX、VALORANT。
高田一生(中段左):新2年生。中学時代はバレーボール部に所属。得意タイトルはAPEX。
志村隆佑斗(中段中央):新2年生、副部長。中学時代は帰宅部。得意タイトルはAPEXで最高ランクはダイヤ1
栗原宏介(中段右):新2年生。中学時代はバスケットボール部に所属。得意タイトルはフォートナイト
杉浦光浩(上段左):顧問、保健体育教師。陸上競技部と柔道部の顧問を経験。
飯島修(上段右):校長先生。就任以前は生徒課長などを務める

機材交渉は粘り勝ち

??今ここに集まっていただいた5人が総合文化部eスポーツコースの主力メンバーの皆さんですね。

志村君 はい、そうです。

高槻君 4月からは総合文化部から外れて、ちゃんと独立した部活としてやっていきます。

??活動状況としてはいかがでしょうか

高槻 平日の2?3時間活動していて、部員はだいたい30数人くらい。メインのタイトルは特になくて、今はAPEXを中心にそれぞれが得意なタイトルを練習している感じです。

志村 今のところ大会があんまりないので。出場する大会が決まれば、出場するメンバーでガチで練習するんですけど、ない時は自分が得意なタイトルを極めています。

高槻 APEXの大会は年齢制限があって、17歳からじゃないと出れないことが多いんです。嬉しいことにこれから新入生がeスポーツ部に入りたいって結構言ってくれているので、これからはその人たちと本格的にやっていきたいと思っています。今はこうやってバラバラに練習してはいますが、結構人数が増えるのでしっかりまとめていきたいです。

??人数もすごく多いですね。皆さんはなぜ主力メンバーとして選ばれたのでしょうか。

志村 もともと機材を買ってもらうよう校長先生と交渉したのがこの5人なんです。僕らが競技としてゲームをやるメンバーで他の人たちは普通にゲームを楽しんでやりたいよっていう部員ですね。

??卒業された3年生や新3年生がいた中で、主力メンバーが全員新2年生というのは意外です。

志村 もともと、eスポーツをガチでやりたいっていうのが1年生が多かったので。eスポーツ部という形を作ったのは自分達って言っても過言ではないと思います。

高槻 僕たちが来るまでは本当にエンジョイって感じで、機材を買うって発想はありませんでした。

??先ほど杉浦先生とお話したとき、生徒たちの熱意が凄かったとお聞きしています。

杉浦先生 5人全員が本当に毎週のように来たもんな。いつも話しかけられたもん。まだですか、まだですかって。

高槻 しつこいくらいに行ったよね。

志村 粘り勝ちです(笑)

高槻「交渉に作戦なんかなくて、本当に思いをぶち当てるだけでした」

??学校でゲームを競技としてプレーするというのは、思いついたとしても実行に移すのは難しい気がします。

志村 この学校って生徒の意見を第一に考えて優先してくれるんです。自分たちがお願いしたら考えてくれて、できるんだったら実際にやってくれるみたいな。生徒想いの学校なので、先生たちには本当に感謝しかないです。

杉浦 本当にしつこかったから(笑)。でも、君たちが中学3年生の時にオープンキャンパスに来てくれて、そのときに俺は「(今のeスポーツ部には)何もないよ、全部自前の設備だよ」って話をしたのは覚えてる?

生徒 覚えてます。

杉浦 この子たちは「それでもやるか?」って聞いたうえできてくれた子たちなんです。実際入ってたらどうなるかな?と思っていましたが、話した通りの熱意を持ってました。だから、ある意味僕に覚悟を決めさせたのもこの子たちなんです。

 ただ、機材をそろえるときに約束したのが、「毎日運動部みたいにやるんだよ」というところです。自分は体育会系ですから、大会が近ければそれこそ土曜日も日曜日も含め、毎日練習させる。「その覚悟はあるか」って、その確認だけはしました。

??遊びではなく部活なんだと。

杉浦 そうですね。

??部活としてやるからには前提となる部分ですね。そのお話を聞いて生徒の皆さんはどう感じましたか?

志村 あぁもう、どんとこいみたいな。

??そうすると、eスポーツ部が存在していること、そのeスポーツ部の設備がしっかりしていないことを知っていて、その上で自分達で変えてやろうという気概があったわけですね。

高槻 PCがないときってSwitch(Nintendo Switch)とかを自分たちで持ってきてカービィやスマブラとかをやってて、大会にエントリーはしていませんでした。それでeスポーツ部、っていうとは何かなあ……って気持ちがあったんです。なのでそんな状況を自分達で変えて、全国を目指せるようなものにしたいなって思っていました。

なぜFPSゲーマーがMOBA大会で1勝をもぎ取れたのか

??21年は実際に全国高校eスポーツ選手権に出場して、オサムーズというチーム名で活躍していましたね。

志村 それは……校長先生の名前ですね。

??校長先生?

栗原君 気づいたらそうなってました。

志村 ネタとして使えるんです(笑)。本当に、ノリがいいというか。生徒の意見をちゃんと聞いてくれますし。めちゃめちゃいい人です。

岩田君 校長先生の顔をPCの壁紙にする人もいて、フリー素材になっています(笑)。

杉浦 これがうちの良さかもしれませんね。

高槻 フレンドリーな高校ですよね。普通の校長先生なら絶対怒っていると思います。

??LoL部門で1勝されていましたが、皆さんが普段プレーしているのはシューティングジャンルですよね?

杉浦 実はこれには恥ずかしい裏話があるんです……。もともとPCが8月に届いたので、大会とはどんなもんかと思って5人で出場できるLoL部門に出場しました。大会は10月とかだったので実質2カ月ぐらいの練習期間ですね。

高田君 僕らはFPSの人間なんでMOBAのことはあんまりわからないんですが、それでも出場が決まった日から毎日のように練習して、レベルも上げて。

杉浦 それでいざ本番の1回戦、対戦相手の遅刻で不戦勝になったんです。

岩田 それで2回戦に行ったんですが、実は僕たちもちゃんとレギュレーションを確認してなくて、チャンピオンの数が規定の数を満たしてなかったことで不戦敗になってしまいました。

??それは不完全燃焼ですね……。

高槻 やる気だけはあったんですけどね。

栗原 しかも、2回戦もあと2秒あれば勝てたんです。

志村 あー、そうだね。2回戦の相手チームも遅刻していて、あと2秒遅かったら不戦勝でまた勝ってましたね。

??コントみたいなお話ですね(笑)。

杉浦 互いに勝手がわかっていなかったのかもね。ただ、大会の雰囲気はつかめたし、出てみただけでも良かったと思います。

岩田 今年はAPEXを中心に本格的に大会に出場していきたいですね。

eスポーツで人から感謝される喜び

??昨年11月は沼津eスポーツフェスティバルがありましたね。

高槻 覚えてます。その時はまだLoLを練習していたので、わからないながらにLoLのブースで教えていましたね。

??フェスティバルに参加してみていかがでしたか。

高槻 教える側がすごく難しかったです。それに、学校やeスポーツ部の宣伝だったり、接客だったりといろんな経験もできて、教える側としてすごく勉強になりました。幅広い年齢の人に教えたので。

??すごく小さい子からお年寄りまで来ていましたね。

高槻 びっくりしました。こんなにたくさん来るなんて。

沼津eスポーツフェスティバルではLoLブースを担当。頭には「誠恵命」のタオルが

??これまでは中学生として教えられる側だったわけですが、教える側になって感じたことはありましたか?

志村 最初は緊張しましたけど、自分たちでわからないなりに教えていくと、その人からありがとうって感謝されて。話を聞いてくれた人から「家帰った後ログインしてやってみるね」って言われたときに嬉しさがありました。

高槻 それは本当にあるね。「オープンキャンパスにも参加する」みたいなことを言ってくれる方もいましたし、すごく嬉しかったです。

??オープンキャンパスの来場者も例年以上だったとか。

高槻 もう、めっちゃ来てくれました。

志村 オープンキャンパスでのeスポーツ部の説明は自分たちでやったんですけど、野球部やサッカー部とかがある中で、50から60人くらいの学生が来てくれて、eスポーツ部だけ人数が飛びぬけてました。

高槻 もう男女問わず来てくれて、部屋を出て階段まで行列になるくらい。

岩田 整理券も急いで作って。番号は80番ぐらいまで行っちゃいました。

高槻 そこに保護者さんもいたので、とんでもない人数でした。親御さんたちも含めて、いろいろ説明しましたね。

目標は賞金で高額機材の元を取る

??皆さん、中学時代はいろんな部活に入っていたみたいですが、実際にeスポーツ部に入ってみていかがですか?

高槻 やっぱり、さっき言った通りeスポーツフェスティバルで教えて感謝されたことが嬉しかったですし、eスポーツと聞いてこの学校に来たいと思った人を増やすことができたのは嬉しいですね。

??eスポーツを広めることができたと。

高槻 そうですね、本当にオープンキャンパスのときはびっくりするくらいの人が来てくれたのですごい影響力だなと。やっぱりコロナ禍になってからゲームをプレーする人が増えていると思います。

志村 僕は、大会を経験できたのはすごく良かったと思ってます。eスポーツ部を作って大会とかに出て、そういう情報を得ることができたのは本当にありがたいと思っています。

??なるほど。確かにeスポーツ部には普段経験できないことがたくさんあるように思います。栗原君はどうですか?

栗原 実は、いまのところまだイベントとか出たことがないんですよ。これまで入部はしていたんですが、大会やeスポーツフェスティバルにはいろいろと事情があって参加できていなくて。

高槻 栗原は今年からだね。

栗原 もともとゲームは好きですし、このeスポーツ部の雰囲気はすごくいいと思っています。

高槻「練習は楽しくガチで、雰囲気よく」岩田「悪口なんて言う人はいない」

??高田君はどうですか。

高田 自分は中学の時からずっとゲームが好きで、逆に高校は行かなくていいのであれば行きたくないというのが本音なんです。けど、こういうゲームや練習を一緒にやってくれる仲間がいると学校に行きたいっていうモチベーションが高まるというか。

??学校も楽しいことばかりじゃないですもんね。

高田 その中で、学校に行く理由というかなにか楽しみがあるのはすごいいいなって思います。

??高田君にとっての学校に行く理由がeスポーツというわけですね。岩田君はいかがですか?

岩田 そうですね、普通にゲームをしていても、イベントや大会に参加する機会はあんまりないじゃないですか。そういうのは自分を成長させてくれる要素がたくさんあると思っています。eスポーツ部に入って機会を得て、成長していける場所に来ることができたのは本当によかったことです。

 悪いところは一切思いつかないし、とにかくゲームをガチで練習して上手くなれるっていうeスポーツ部の環境にいられるのは本当に嬉しいです。

??確かに、eスポーツ部自体がチャンスを引き寄せる場になっているかもしれませんね。それでは最後に、部活としての今後の目標を教えてください。

志村 新入部員を迎えて、メンバーをしっかり揃えて、いろんな大会に出て……。

高槻 経験値を積んでベスト何位かの順位を獲ったりして、上を目指せるだけ目指したいです。

??盛りだくさんですね。

志村 そうでもしないと。学校には買ってもらったんで。

岩田 大会賞金で元を取るぐらいしないとね。

高田 そうだね。期待に応えたいね。

栗原 まあ、できれば返したくないけどね。

高槻 おい(笑)

志村 本音が出たな

??しっかりと恩返しができるといいですね!

■関連記事

■外部リンク

誠恵高等学校=http://www.seikei-on.ac.jp/

部活紹介

おすすめ関連記事

eスポーツ部の活動日誌

新着記事

ゲーミングデバイス情報

  

ゲーミングデバイス情報

新製品 レビュー 部活紹介 eスポーツ部の活動日誌