大会レポート

2024.02.10

アツい戦いを繰り広げる大学生たち それと研究×eスポーツ!?筑波大学主催のeスポーツイベントに密着!

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 筑波大学は、「研究×eスポーツ」をテーマとしたeスポーツイベント「OWL GAME」を1月20日と2月3日に開催しました。競技種目はVALORANT。主催校の筑波大学eスポーツチーム OWLS、明治大学 Meiji esports Club(MeC)、早稲田大学esportsサークル(WeC)、テンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)の4校が参加し、2週にわたり、試合形式Bo1の総当たり戦で競い合いました。今回編集部は勝負も佳境に入った2月3日のweek2の模様を取材しました。

↓試合の公式配信はコチラからチェック↓

【VALORANT】TSUKUBA LIVE! OWL GAME 2 Week 1【筑波大学OWLS】
https://www.youtube.com/live/pF6iupy8OB8?si=CfvPvjnt4v2hCQxO

【VALORANT】TSUKUBA LIVE! OWL GAME 2 Week 2【筑波大学OWLS】
https://www.youtube.com/live/FmDgxg4fyE0?si=sGh8Xu3644giyGFR

OWL GAME week2の現地の様子を取材

学生主体の運営体制 全面ガラス張りで通行人が皆釘付けに

 同イベントが行われたのは、つくばエクスプレスつくば駅から徒歩数分のところにあるオープンスペースco-en。外には大きな岩場や噴水があり、音楽PVの撮影や仮面ライダーシリーズなど特撮のロケ地としてもよく使用されるそう。

 会場は施設内のコワーキングスペースのすぐ隣というちょっと変わった配置。配信スタジオ、スイッチングなどを行う配信部屋、選手たちが実際に対戦する対戦ルーム、そのすべてがガラス張りになっているのも特徴です。

対戦ルーム、配信部屋、スタジオのすべてがガラス張り。
そのすぐ横には勉強・仕事をする人たちが。
部屋から音は全く漏れないので安心
隣はコワーキングスペース。
時期が時期なので受験生も多い


 同大学体育スポーツ局の米原さんは「これもある意味では狙い通りなんですよね」と得意げな様子。確かに、配信の様子やキャスターの実況、試合中の選手たちのリアクションがすべて丸見えだと、道行く人やほかの施設利用者は「いったい何をやっているんだろう」と興味を持つことでしょう。「eスポーツをより身近に感じてもらう」という点で考えれば、狙いはそこにあったのだといいます。

 ちょうど会場の通路は通り抜け可能で、モニターから試合の様子が確認できるようになっています。前を通る人は皆足を止めたり、視線を向けたり、子どもは食い入るように眺めたりと集客効果を感じさせる演出でした。

 配信作業やスタジオの進行、実況解説、イベントの運営に至るまですべて大学生たちが行っているのも大きな魅力。今回は筑波大学主催ということで、OWLSのメンバーに加え同大学のeスポーツサークルも協力していました。

スイッチングや配信作業などは主に筑波大eスポーツサークルが担当


 試合中のUIは編集部で以前インタビューしたOWLSのk1tti3s選手が主に担当。体力ゲージやポイント数など、画像認識なども駆使し学生主催大会とは思えない造りです。イベントポスターなどビジュアル面は同大学にある芸術専門学群が手掛けています。フォントから自作したOWL GAMEのポスターにはプロ顔負けの雰囲気すら感じます。

会場に貼られたOWL GAME ポスター


 Week2のキャスターには、現役明大生eスポーツキャスターの米田優希さんを起用。eスポーツイベントにトラブルは付き物ですが、試合開始まで時間がかかってしまっても、ゲストとのフリートークでしっかり場を繋げ、現場での評価も上々でした。

配信スタジオ
実況の米田さん(左)とOWLSのfumisukeコーチ。
Week2はそれぞれのチームからゲストが登場し解説

途中 地元のeスポーツチームがスカウトに訪れる場面も

 実験とはいうものの試合の合間の行動に特に決まりはありません。試合後に心拍数などのデータを取った後、参加者たちは節分なので恵方巻をほおばる、ラムネを食べる、談笑するなど思い思いの時間を過ごしていました。TUJの選手たちは控室で仮眠を取っていたという目撃情報も寄せられたほどです。

試合のない時間に談笑してリラックスするOWLS一行


 そんな中、地元茨城を拠点に活動するeスポーツチーム「ORB GARDEN」が選手のスカウトや視察に訪れる場面もありました。同チームのディレクター じゅんぴーちさんはVALORANT部門の新設にあたりメンバーを探しているそう。

じゅんぴーちさん 部門新設にあたって、選手はもちろん、コーチやアナリスト、イベント企画・運営といったサポートスタッフも募集しています。SNSで県内の情報を収集する中、OWLSとはSNSで相互フォローだったので思い切って現地に赴きました。

選手たちと話をするじゅんぴーちさん(左下)

炭酸水でパフォーマンスに差は出るの?松井研究室の実験も大会内で実施!

 「研究×eスポーツ」をテーマにしているからには、大会では実験データも収集します。会場に来てまず目に飛び込んできたのは、ラムネとグミ、それと冷蔵庫に入った大量の炭酸水と天然水。スポーツ科学の観点からeスポーツを研究する筑波大学の松井研究室と飲料水のアサヒ飲料が共同で行っている今回の実験では「eスポーツの試合で炭酸水を飲むと真水に比べてパフォーマンスに差が出るのか」といった課題を設け、選手たちには炭酸水と真水を摂取してもらいました。唾液を採取し、アンケートなどを実施し、試合中には「TECHNICAL PAUSE」の時間も。選手たちは最低でも200mlの飲料を摂取する必要があるので、こうして試合の間にトイレ休憩を設けているのだそう。さらに選手やコーチ陣の視線も動きなどもデータを取り、多方面から炭酸水の効果を検証しました。

ラムネやグミが選ばれたのはブドウ糖以外の成分が
あまり含まれておらず、実験に影響を及ぼさないため


 以前の共同研究ではプレー時に強炭酸水を摂取すると面白さや判断力が上がるといった結果が出ていますが、今回は「試合中」という少し異なる環境。こちらの詳しい結果も今後気になるところです。

eスポーツでもやっぱり天王山は早明戦!?

 早明戦と言えば大学ラグビーの方が思い浮かぶかもしれませんが、このeスポーツ界でも早明戦が大会優勝を決める大一番となりました。

 迎えた第5試合はMeiji esports Club VS 早稲田大学esportsサークル。両者の勝ち点は僅差で、この試合の勝敗で大会優勝チームが決まるという展開。

 MeCは2023年のVALORANT Challengers Japan(VCJ)にも出場中のアマチュアチーム「Nester」に所属する稟選手を擁し、2023年の第1回のOWL GAMEの前回王者。個々の実力も相当なものです。一方で、WeCは、前回4位に終わり、チーム力を鍛えて再起を賭けて挑みました。終始シーソーゲームとなった試合は、終わってみれば11-13。大会を制したのは早稲田大学esportsサークルでした。

第2回 OWL GAMEを制し雪辱を果たした
早稲田大学esportsサークルのみなさん

勝利の瞬間 喜びを爆発させ涙する選手やコーチたち
コーチを務めるLawyer選手 早稲田の
カレッジTシャツを着用し気合は十分だった


 イベントを終え、コーチのLawyer選手は次のように語りました。

Lawyer選手 昨年は選手として参加し1マップも取得できず全敗という結果に終わりました。プレースタイルの違いやオフラインでの試合が初めてだったこともあり上手くいかなかったのですが、今回はロースターを変えて挑みました。私たちは、大学の中で長い時間を共にした第二の家族的な存在。そういった良好な人間関係を保ち、この大きな舞台で勝利できたというのはうれしいものがあります。最後の試合ではリードされる場面もあり、僕自身声が震えてました。タイムアウトを何度か取って、声を振り絞りながらアドバイスをして、それに応えてくれた選手たちにはもう感極まるとしか言いようがない気持ちです。

リーダーを務めるt4ct選手(右)は大会運営の選ぶBEST5にも輝いた。
イベント当日が誕生日だったそう(左は松井崇先生)


 t4ct選手は勝利の要因を問われ以下のようにコメント。

t4ct選手 今回の勝利の要因というよりは長い目で見たときのことなのですが、自分たちが強くなれた理由は「仲が良い」ことにあると考えています。大学のeスポーツはプロと違ってお金を貰っているわけじゃない。だから仲良くないとメンバーの中の連携が保てないんですよね。すれ違いがあるとスクリムやりたくないとか、やる気がなくなってしまう。今のWeCはメンバー同士の関係は良好で、マネージャーも付いてる。お金をもらっていないながらも、非常に恵まれた環境でプレーに集中できているんだなと感じます。

 優勝した早稲田大学esportsサークルは3月26日に開催予定のOWL GAME エキシビションマッチへの出場権が与えられます。このエキシビションではプロ選手との対戦を予定。優勝チーム、準優勝のMeiji esports Clubにはアサヒ飲料提供のウィルキンソンタンサン・カルピスウォーター半年分が贈られました。イベントの最終順位、個人賞の受賞者は以下の通り。

1位早稲田大学:10pt
2位明治大学:9.5pt
3位テンプル大学ジャパン校:1.5pt
4位筑波大学:0pt

個人賞受賞者
MVP 
ようすけ選手(明治大学)(平均ACSスコア308.5)

BEST5 
Uni選手(テンプル大学)
sora選手(明治大学)
禀選手(明治大学)
taimai選手(早稲田大学)
t4ct選手(早稲田大学)

イベントのあれこれ

早稲田大学esportsサークルにはマネージャーがいる!?

 先ほどのt4ct選手のコメントにもあったように、WeCにはeスポーツサークルでも非常に珍しいマネージャーという役職があるとのこと。マネージャーを務めているのは1年生のOracleさん。選手たちがプレーにフルコミットできるようにスクリム開催のやり取りを進めたり、スケジュールを組んだりするのが役割なんだそうです。イベント当日も選手たちの活躍を写真に収めていました。そんなOracleさんにサークルの活動について聞いてみました。

Oracleさんは幼少期にSFアクション映画「マトリックス」に衝撃を受け、
eスポーツサークルに所属する傍ら、映像制作などにも精力的に挑戦しているという


Oracleさん
 今サークルには180人ほどが所属しています。こういったガチガチのVALORANT部門がありながらもカジュアル層も一定数いる、そんな幅広い層が楽しんでいるのが特徴です。長期休みになるとたくさんの部員がそれぞれボイスチャットで仲良くやったり、もちろんオフラインのつながりも大切にしています。eスポーツカフェを貸し切ってApex Legendsの大会を開いたりといった取り組みも行いました。非常に和気あいあいとした雰囲気で活動させてもらっています。

観客に驚きとスリルを届けるエンターテイナー TUJチーム

 今回イベントには初参加となったテンプル大学ジャパンキャンパス。デュエリスト3人というチーム構成や、ドライでサイトの中に飛び込んでいくなど、驚きのプレーを連発し、大いにイベントを盛り立ててくれました。試合前も歌を口ずさみながら対戦ルームに入室するなど、緊張感を感じさせません。

試合前でもハンドサインをカメラに送るほどの余裕をみせた


 日本へ来た留学生などで構成されているという同チーム。キャプテンのUni選手自身も「やっぱり見ている人が楽しんでもらわないと」と話しており、イベントをエンターテインメントとして盛り上げたいという意図があった様子。さらに日本とアメリカのVALORANTのプレースタイルの違いについても言及してくれました。

Uni選手(左)はイベントのBEST5にも選ばれた


Uni選手
 OWLSの試合では特に顕著だったのですが、日本のプレーは基礎がとてもしっかりしていて注意深い。アメリカではノリのほうが大きいかもしれませんし、どちらかというとスピード感があります。今回は見ていてつまらない試合はしたくなかったので、新しいチーム構成を試してみたり、フィジカルで押し切ってみたりしました。観客が楽しんでもらえたならうれしいです。次があるならぜひその時も参加したいですね。

次回イベントは3月26日 体験ブースやシンポジウムも予定

 今回のイベントを終えて松井研究室の松井崇先生は次のように締めくくりました。

松井先生 第1回はもちろん盛り上がりましたが、今回も選手たちが涙する場面もあり、一生懸命プレーする姿を見て私も感銘を受けました。これを機に大学eスポーツがさらに盛んになることを願います。なんと、一番盛り上がった試合では心拍数のピークが192あったそうです。これは今年40歳になる私が一生懸命ダッシュしても出しようのない数値です。またこのあたりの調査結果についても今後まとめていきたいと思います。


 次回のイベント「茨城県eスポーツフェス」は、3月26日につくば国際会議場で行われ、筑波大学スポーツイノベーション開発研究センター、茨城県、筑波大学体育スポーツ局共催となります。早稲田大学esportsサークルとプロ選手とのエキシビションマッチのほか、観客も楽しめる体験ブースの出展なども予定されています。

 機材の購入や活動場所などの問題があり、その多くが大学非公認でありながらも、懸命に活動を続けてきた大学のeスポーツサークルやチームたち。大学eスポーツシーンを盛り立てようと努力する彼らの活動には、今後も要注目です。

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外部リンク

OWLS | 筑波大学eスポーツ X公式
https://x.com/tsukubaowls_esp?s=20

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