大会レポート

2024.11.10

実況愛にあふれる出場者たちがスト6実況の上手さを競う 第4回全日本eスポーツ実況王決定戦 大会レポート

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 11月9日 群馬県eスポーツ・クリエイティブ推進課の「eスポーツ選手権実行委員会」は、11月9日に「第4回全日本eスポーツ実況王決定戦」を「Gメッセ群馬 展示ホールC」で開催しました。

実況王が開幕


 全日本eスポーツ実況王決定戦は、eスポーツ実況の技能を競う全国初のeスポーツ実況者の大会。

 eスポーツキャスターの平岩康佑さんを審査員長に迎え、タレントのRaMuさん、ゲームセンターCXなどで著名な放送作家の岐部昌幸さんが審査員を務めます。さらに、特別審査員にはストリートファイターシリーズではお馴染み、キャスターのアールさんを起用しました。メインMCは大和周平さん、アシスタントMCは声優e-Sports部の鈴木絵理さん。

平岩審査員長
RaMuさん
岐部さん
アール特別審査員
大和周平さん(右)と鈴木絵理さん


 会場では予選を勝ち抜いた8名の選手による実況バトルが繰り広げられます。1対1の対戦形式で、選手が交互にプレー動画に実況を行うトーナメント戦。先攻後攻があるものの、互いの実況は確認できないシステムになっています。決勝の舞台で、参加選手は頂点の実況王を目指します。

 審査項目は「ゲームの理解力」「試合の言語化能力」「発話力」「オリジナリティ」「熱量・エナジー」の5項目20点ずつ。一人当たり合計100点満点(審査員4人で400点満点)。

 大会の課題となったのはストリートファイター6。10月に行われた獅白ぼたんさんのスト6イベント「獅白杯2nd」の試合動画が使用されており、スト6愛がどのくらいか、コミュニティのトレンドをしっかり押さえているのかが大きなカギになりそうです。

トーナメント表。会場で実況を披露するのはあくえり選手、馬大佐選手、くもしゃじ選手、CooRe4nse選手、小路KOG選手、ハマシカ選手、マクア選手、ヨドさん選手の8名


「熱量がいっぱい」「冷静に実況」に分かれた準々決勝 ギリギリな接戦が続く

 準々決勝第一試合はフリーeスポーツキャスターCooRe4nse選手 VS eスポーツキャスター/講師の馬大佐選手の対戦カード。ゴールデンボンバーの歌広場淳さん(ケン)とG-STAR gamingの桃井ルナさん(ジュリ)の対戦動画が課題となりました。

 CooRe4nse選手は画面端に寄せる歌広場さんを「端広場」と表現するなど、ユニークな言葉選びが目立ちます。馬大佐選手も声の抑揚を上手く使い、盛り上がりを演出しました。採点の結果は、315対283で、CooRe4nse選手が勝利しました。平岩さんは「馬大佐というハードにCooRe4nseというソフトを入れるとすごく良い実況が生まれると思う」と独特な表現のコメント。惜しくも敗退となってしまった馬大佐選手は「何よりこうやって数字で評価してもらえるのがうれしい」と晴れやかな表情。CooRe4nse選手は「先ほど指摘していただいた課題を改善して、引き続き大会頑張ります」と意気込みを述べました

勝利したCooRe4nse選手
馬大佐選手


 準々決勝第二試合は、eスポーツキャスターで会社員のくもしゃじ選手 VS 格ゲー大会実況者のヨドさん選手の対戦。課題はいずれもプロ選手のGood 8 Squad所属ぷげら選手(ベガ)とCrazy Raccoon所属かずのこ選手(キャミィ)のフルセットに及ぶ対戦動画。

 くもしゃじ選手の実況は情熱的で盛り上がるのに対して、ヨドさんは状況がよくわかる冷静な実況を展開し、両者対照的なスタイルです。315対306で勝利したのはくもしゃじ選手。声を張り上げフルセットの試合を力いっぱい走り切ったのが審査員らの印象に大きく残ったようです。くもしゃじ選手は「言葉に表せないくらいうれしい。いろいろな人に支えられています。試合前にはヨドさんにも握手や肩を叩かれ『がんばろうな』と言ってもらえたので、この後も頑張りたいです」とコメントしました。

勝利したくもしゃじ選手は全選手の中で一番の声量と言って良いだろう
ヨドさん選手


 準々決勝第三試合は、Fighters Crossoverスタッフのハマシカ選手 VS プロeスポーツ組織「IGZIST」所属の小路KOG選手。動画はVTuberの天鬼ぷるるさんVSりーさるぷらん所属格ゲーVTuberの星鳳ともりさん(いずれもジュリ)の同キャラモダン対決。両者共にスト6に精通していることから、実況が難しい課題となっているのは偶然でしょうか。

 実は両選手、プレイヤーとしても活動し、大会にも出場しています。ハマシカ選手は前回対戦では、小路KOG選手に敗れているそうです。

 試合では、両者安定感のある実況を展開。特に小路KOG選手は、審査員のRaMuさんに「解説と実況がそれぞれいるのかと思った」と言わしめるほどです。ハマシカ選手は実況中笑みがこぼれる場面も。撮影している側からは、実況を楽しんでいるような感覚も伝わってきました。小路KOG選手はゲーム外のことにも言及するほか、スト6に詳しくない人向けに、ゲーム自体のシステムにも触れるなど解説面も抜かりがありません。結果は334対336で大接戦でしたが小路KOG選手が勝利しました。ハマシカ選手は「ギリギリ負けました……」と悔しそう。小路KOG選手は「ギリギリ勝てました……。まだまだ戦いは続きますので、頑張っていきたいです」と優勝に向けてコメント。某プロ選手の構文で掛け合う様子に会場や審査員からは笑いが起こりました。

勝利した小路KOG選手
ハマシカ選手は試合中に笑みがこぼれるなど楽しさすら感じられた


 準々決勝第四試合は、クラブSUZUKI所属で会社員のあくえり選手 VS エンジニアが本業のマクア選手の対戦。課題動画はぷげら選手(ベガ)とCrazy Raccoon所属のレッドブル・アスリート ボンちゃん選手(豪鬼)の対戦。両キャラ共に攻撃力が高く、試合展開が速いのが特徴です。実況力が試されます。

 両者共に完成度が高いのはもちろんですが、熱量のあくえり選手、冷静なマクア選手とここでも対照的な実況スタイルの対戦となります。結果は311対315でマクアさんが勝利。平岩さんは「ボンちゃん選手が正義執行人と言われているのは誰でも知っている。けどマクア選手は、最後の試合の締めも『正義の拳で…』とまいた種を回収していたのが素晴らしかった」とコメントしました。マクア選手は「ギリギリ勝てて良かったです・・・。まだまだ大会を楽しみたいと思います」とホッとした様子でした。

勝利したマクア選手。同選手も顔がほころぶ瞬間があった。この後の試合では「対戦動画が面白くて夢中になってしまう」と語っており、心から楽しんでいるようだ
あくえり選手


戦いの中で成長する選手たち 準決勝~決勝 実況王に輝いたのは…?

 準決勝第一試合は、CooRe4nse選手 VS くもしゃじ選手。課題は、星鳳ともりさん(ジュリ)対 コスプレイヤー兼VTuberの真白ふとんさん(ジェイミー)の対戦動画。

 準々決勝を踏まえ、両者とも完成度を高めた実況を展開します。CooRe4nse選手はよりスト6らしい言葉選びに、くもしゃじ選手は落ち着いた緩急のある実況に変化していました。結果は329対340でくもしゃじ選手が勝利。決勝進出となりました。いずれも審査員らは、初戦からの成長度を評価する形。くもしゃじ選手は勝負がついたときに、大きなガッツポーズでうれしさを表現し「CooRe4nse選手とはライバルというか、いずれ戦うだろうと思っていたので勝ててうれしいです」とコメントしました。

決勝進出でガッツポーズするくもしゃじ選手


 準決勝第二試合は、小路KOG選手 VS マクア選手の対戦です。課題は、G-STAR Gamingの芦澤佳純さん(キンバリー) VS ZETA DIVISION所属クリエイター ファン太さん(エドモンド本田)の対戦動画。変わったキャラの組み合わせで、かつ試合展開が早く、実況が難しそうというのが印象です。

 しかし小路KOG選手は引き続き解説を交えながらも流れるように実況を展開。対するマクア選手もこれまで以上に声量を上げ、対戦に臨みます。結果は、339対331で小路KOG選手が勝利し、決勝進出を決めました。採点結果発表前に、平岩さんが「俺のアドバイスが悪かったのかな。ちょっと説明が多くなってないですか?一回目の方が上手くなかったですか?」とコメントがあったことから「100%負けたかと思った」と小路KOG選手。マクア選手は惜しくも敗退となりましたが「平岩さん、大和さん、アールさんの前で実況が披露できたことは本当にうれしかったです。ありがとうございます」と悔しさをにじませながらコメントしました。

スクリーンの採点結果を見て思わず万歳する小路KOG選手


 いよいよ決勝戦。くもしゃじ選手か小路KOG選手か、この一戦で4代目実況王が決まります。課題はボンちゃん選手(豪鬼)対かずのこ選手(キャミィ)の対戦動画。なお、決勝戦では採点方式ではなく、審査員の投票形式となります。

 決勝戦だけあって、2度の試合を経た両者は、これまでの審査員からのアドバイスなどを踏まえ、どちらも甲乙つけ難い完成度。結果はくもしゃじ選手に票を入れたのが2人、小路KOG選手へ入れたのが3人で、小路KOG選手が実況王に輝きました。大和さんは「ワンマンで仕事をするときに、実況と解説をどちらもできる。ここを考慮した時に、小路KOGさんが優れていると思いました。くもしゃじさんも今回は非常に素晴らしい実況をしてくれたので、経験を積んでいけば将来有望だなと思いました」とコメント。小路KOG選手のプロ選手としてのバックボーンも味方したことを述べつつ、両者の健闘をたたえました。

 アールさんは「小路くんは詰め込みすぎの感が否めなかったのですが、バランスを上手く修正してきた。くもしゃじさんもこれまでの大会の過程でいろいろ改善を加えていったのは素晴らしいと思います。」と冷静に分析しました。

 小路KOG選手は「プロゲーマーとして頑張るのはもちろんですが、実況・解説足りないよってときは、ぜひ私を呼んでほしいと思います。ほんとにこんな大会を用意いただいて、大変うれしいです」と優勝を喜びました。

優勝が決まった時の小路KOG選手 万歳は今回二回目
小路KOG選手は、コーチングなども行うマルチな活動を展開中。「いろいろできた方が将来役に立つじゃないですか」と同選手。eスポーツとキャリアをテーマに学校などで講演する活動も行っている
準優勝に輝いたくもしゃじ選手は、ロケリ界隈からの応援が目立った。今後の実況活動にも期待したい
動画のみの審査となっていたオンライン部門で優勝となったGORIX選手も表彰式に登場した


 筆者は昨年から引き続いての実況王の取材となりましたが、今回は実況中に笑みがこぼれる選手が何人かいたのが印象的で「心から実況を楽しんでいる」そんな姿勢が伝わってきました。次回はどんな選手が登場するのか、楽しみですね。ファイナリスト達の今後の活躍にも期待です。

皆さんお疲れ様でした!
先代の実況王 Doctorさん 出場者の雄姿を見守りに観戦に来てましたよ!

【昨年の実況王の様子】
eスポーツ実況の頂点の頂点に立つのは?第3回 全日本eスポーツ実況王決定戦が開幕!大会レポート
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外部リンク

全日本eスポーツ実況王決定戦 公式X 
https://x.com/jikkyo_oh

全日本eスポーツ実況王決定戦 公式ホームページ
 https://esports-jikkyo-oh.jp/

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