解説
2022.08.10
ゲームとなじみ深い「メタバース」って何? ゲームとの関係性についても解説!
- 解説
デジタル上に創り上げた仮想世界を意味する「メタバース」。近年のコロナ禍において注目度が急激に高まり、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めている技術として期待されています。今回は、メタバースとはいったい何なのか、どんな魅力があるのかをゲームとの関係を中心に解説していきます。ゲーム分野とも非常に強い結びつきがあるもので、今後ますますの発展が見込まれる分野です。
「メタバース」とは
「メタバース」とは、デジタル上に創り上げた仮想世界のこと。ゲームを嗜む人にとってはお馴染みの世界です。PCやスマホ、ゲーム機などのデバイスを通じてアクセスできるもので、現実世界に非常に近い空間を再現したり、現実世界では不可能な事象を再現したりして新たな体験を生み出せる技術です。
メタバースの語源とイメージ
「メタバース」は、”超越”を意味する「Meta」と”世界”を意味する「Universe」の2つの英単語を掛け合わせた言葉です。アメリカの作家ニール・スティーヴンスンによるSF小説『スノウ・クラッシュ』に登場する、人間がネット上のアバターを介してやりとりをする仮想世界の名称として使われたのが発祥と言われています。人間の肉体は現実世界にありながらも、PCやスマホ、ゲーム機などを通じて現実とはまったく異なる仮想世界の中に身を置く疑似体験ができるのがメタバースの魅力です。
今メタバースが注目されている理由
現在、メタバースの存在が非常に大きな注目を浴びています。これまでは現実世界で行っていたさまざまな仕事や行事、イベントの舞台を仮想世界の中へと移して誰でも、どこからでも参加ができるシステムが近年のコロナ禍において急速に発展しました。メタバースの技術はゲームなどのエンターテインメント分野はもちろんのこと、幅広い目的での活用が期待されているのです。
すでにメタバースが利用されている事例
メタバースの技術は、すでに私たちの生活に深くかかわる身近なものになりつつあります。幅広い分野において、メタバースが利用されている事例を三つ紹介します。
バーチャル店舗
バーチャル空間に店舗を構え、顧客が疑似的に店内を巡りながらさまざまな商品を見ることができるサービスです。店員によるアテンドも加えれば、自宅などにいながらも実際に店舗を訪れて買い物をする形式に非常に近い体験ができます。近年のコロナ禍で従来通りの営業が困難になった百貨店・デパート業界では特に注目されており、実店舗への来店を控える顧客に向けてバーチャル店舗を活用したオンラインイベントが急増しました。
バーチャルオフィス
コロナ禍において、テレワークとともに急速に普及しているのがバーチャルオフィスです。必要なときのみビデオ会議などによって業務に関連するやりとりを行うテレワークという働き方には、個人作業が基本で社員同士の交流をはかりにくいというデメリットがあります。そこで、バーチャルオフィス内に疑似的に身を置くことで、休憩中にたわいのない雑談をするような形のコミュニケーションが可能になります。
同じオフィスの中でともに働いているという意識も高まりつつ、実際にオフィスを設けるための土地代などの費用が削減できるとして注目度が高まっているサービスです。
バーチャルライブ
デバイスとインターネット環境があれば誰でも、どこからでも参加できる形式のライブも、新たなエンターテインメントの形として注目されています。バーチャルライブは、すべてのユーザーが同じ時間を共有できるというメタバースの特性が非常に強く生きる活用例です。アーティストがリアルタイムでパフォーマンスを届けるだけでなく、リアクション機能やチャットを活用すれば、観客からもアーティストへメッセージを返すことができます。
近年ではこのような形式でのみライブを行うバーチャルアーティストも増えてきているため、バーチャルライブは今後ますます充実したものへと発展していくでしょう。
メタバースとして注目されているゲーム例
メタバースの技術を活かしたシステムが注目されている例として、ゲーム作品を5つ紹介します!
フォートナイト
TPSゲームとして広く知られる作品ですが、ゲーム本来の目的である戦闘をせずにプレイヤー同士の交流ができる「パーティワールド」の登場によって、メタバースゲームとしても発展を遂げています。オリジナルのパーティ空間を作り上げ、フレンドを招待してリラックスしながら過ごしたり、新たなフレンドに出会ったりすることに集中できる、TPSゲームとしては斬新なモードです。
The Sandbox
プレイヤー一人ひとりがLANDと呼ばれる土地(メタバース)を持ち、独自の世界観・キャラクター・アイテムを作り上げる作品です。制作したゲームデータは、全プレイヤーがデータを共同管理することで不正な改ざん・複製を防ぐブロックチェーンの技術によって、現実の物体と同じように唯一無二の価値を持つデータ「NFT(非代替性トークン)」として保管されます。
ゲーム内で制作したデータが自分の資産となり、価値を持ったデータとしてオークションなどの形式で売買ができるのが大きな特徴です。このようなNFTを利用したゲームは近年増加しており、ゲームの新たな形として注目されています。
Roblox
Robloxは、5000万本を超えるゲーム作品を取り扱っているゲームプラットフォームです。配信中のゲーム作品一つひとつがメタバースとして存在しており、プレーするのはもちろんユーザー自身が制作したゲームを配信・収益化することができます。
ソーシャル機能により、同じゲームを一緒にプレーすることも可能です。実際に会って遊ぶことが難しくなったコロナ禍において、離れた場所にいても同じ時間・同じ体験を共有できるツールとして子どもを中心に広がりを見せたサービスでもあります。
Minecraft
エリアによってさまざまな地形・自然環境を持つ広大なワールドの中で、建築や釣り、農業・採掘、探検、バトルアクションなどを楽しめる作品です。このワールド自体がメタバースにあたり、プレイヤーのアイデア次第でオリジナル性が非常に高い空間を作ることができます。趣向を凝らして制作したワールドはネット上に広く公開することが可能で、プレイヤー同士の交流も盛んです。
あつまれ どうぶつの森
小さな無人島を開拓し、個性豊かな住民キャラクターと暮らしながら理想の島を作り上げることができるこの作品では、島全体がひとつのメタバースとも言えます。自分の島へ友達を招待したり、友達の島へ遊びに行ったりといった交流も可能で、同じ空間で釣りや虫捕りなどのアクティビティを一緒に楽しむ体験ができます。
メタバースが発展するメリット
今後メタバースがさらに発展していくことで得られる、私たちの生活にかかわるメリットは主に以下の3つです。
住んでいる場所に関係なく交流の輪が広がる
メタバースは、住んでいる場所に関係なく誰でもデバイスを通してアクセスできる空間です。世界中のユーザーと気軽に交流ができるのが魅力で、離れた場所にいても同じ時間を共有できます。現実世界では出会える機会がない相手と知り合う、貴重なチャンスが多く生まれることが期待できます。
仕事面でもプライベート面でも充実した体験ができるようになる
日々の生活において仕事面でもプライベート面でもメタバースを取り入れれば、これまではさまざまな障壁があり実現できなかったさまざまな体験が叶います。単純なオンライン上のやりとりとはまったく違う感覚でのコミュニケーションが可能になり、私たちの暮らしがより充実したものになるでしょう。
新しいビジネスの場が広がる
現状のメタバースの活用例はエンターテインメント分野の印象が強いですが、ビジネス分野においてもこれまでにない仕事のスタイルの実現に期待が寄せられています。例えば、偽造不可・所有証明書つきのデジタルデータであるNFTの技術とメタバースを掛け合わせることで、対面での商談に近いコミュニケーションをとりながらデータの取引をすることが容易になります。
メタバースを活用した新たな形でのビジネスが浸透していけば働き方の幅が広がり、将来の仕事の選択肢も増えていくと見込まれています。
メタバースが発展した場合に想定される注意点
将来的にメタバースが発展して私たちにとってより身近なものとなったとき、新たに想定される注意点もあります。
依存症が懸念される
現在でもスマホ依存症などが大きな問題となっていますが、技術の発展・普及とともにメタバース依存症もここへ加わる可能性が高いです。現実世界への不満や恐怖心を抱いた人がメタバースへ逃避し抜け出せない状態になってしまうことで、現実での日常生活に支障をきたす懸念があります。メタバースにのめり込みすぎないよう、特に子どもに対して各家庭での教育が大切になります。
現実世界でのコミュニケーションの希薄さが懸念される
メタバースを活用したゲームは、一緒にプレーする相手を必要とせずコンピューターとプレイヤーの1対1で成立するものも多いです。メタバースに身を置く体験に慣れると、人との対面のコミュニケーションが面倒に感じてしまいかねません。依存症への対策と同様に、メタバースにのめり込みすぎないよう現実の問題に対処する手段を確立するなど、工夫が求められます。
十分に知識がなければ人間関係と金銭面のトラブルに巻き込まれる可能性がある
メタバースは最先端のIT技術や仮想通貨などとも親和性があるため、各分野に関する十分な知識を持っていないと予期せぬトラブルに巻き込まれる危険があります。特に注意したいのが人間関係と金銭面のトラブルです。
メタバースではアバターが自分自身となって動きます。そのアバターが不正なアクセスにより盗まれてしまうと、メタバースの中での自分の存在自体が失われてしまうことになるのです。仮想通貨にも同じことが言え、セキュリティシステムの脆弱性を突いた不正アクセスによって個人の資産が盗まれる事件が起きる可能性があります。
現実世界とはまったく異なる体験を楽しめるのがメタバースの魅力ですが、メタバースの中で安全に生きるための感覚も新たに身につけなければなりません。現在はメタバースに対応する法整備もほとんどできていないため、細心の注意が必要です。
メタバースを体験するための機材が必要になる
メタバースを体験するためには、最低限PCやスマホ、ゲーム機などのデバイスが1つは必要です。VR技術を活用したコンテンツであれば、デバイスに加えてVRゴーグルなどのグッズも揃えなければなりません。準備にやや時間と手間がかかり導入コストも高くつくため、メタバース体験に関する大規模なイベントを開催したり、メタバースに特別な興味を持っていない方にまで広く普及することを目指したりするのは難しいのではないかと考えられています。
メタバースとeスポーツの関係性
メタバースとeスポーツは、バーチャルの観点で親和性が高いコンテンツです。メタバースの中でファン同士が交流しながらeスポーツの試合を観戦したり、一緒にゲームをプレーしたりといった新たな形での楽しみが生まれる可能性を秘めています。
デバイス越しでは難しかった”仲間と同じ時間を共有する”感覚をメタバースによって得られるようになり、プレーするだけではなく観て楽しむeスポーツ文化の発展にもつながっていくでしょう。
まとめ
近年急成長を遂げているメタバースの技術について、活用例やメリット・デメリット、ゲームとの関係性について紹介しました。デバイスを通じていつでもどこからでもアクセスできるバーチャル空間において、他のユーザーと同じ空間を共有しなくても現実世界に近い体験ができたり、反対に現実世界では不可能な現象を再現して新たな楽しみを創出できるのがメタバースの魅力です。
メタバースの技術はゲーム分野とは特に相性が良く、eスポーツ文化の発展にも大きく貢献することが見込まれています。これまでにはない新たな体験を叶えるツールとして、メタバースを取り入れたコンテンツにぜひ注目してみてください。