インタビュー
2025.03.21
【後編】「続けていて苦にならず楽しめる環境づくりが大切」日本人初のスマブラコーチ Crazy Raccoon カイトさんに聞く キャリアと仕事
- 大会/イベント
【ゲームの進路相談室・第11回・後編】eスポーツ・ゲーム業界で活躍する人の足跡をたどり、将来の夢を叶えるためのヒントを提供する「ゲームの進路相談室」。Crazy Raccoon所属のスマブラコーチ カイトさんに、話を聞いている第11回。前編では自身がコーチになるまでのいきさつを話してもらいました。後編ではeスポーツ業界で活躍を目指す学生・生徒に伝えたいことなどを聞いてみました。
(取材・文/寺澤克 写真/松嶋優子)
Profile
カイト / Kaito
日本人初のスマブラコーチ。埼玉県深谷市出身。1987年生まれ。VGBootCamp、CJE Sportsを経て現在はCrazy Raccoon所属。会社員として働きながら、各地のスマブラDXの対戦会などに参戦。2017年からは初のスマブラプロ aMSa選手のコーチに就任。19、23年にはSmash Ultimate Summitにコーチとして招待。ShogunさんやProtoBanhamさん、にえとのさん、うめきさんなどに指導。スマブラ塾「カイトスクール」運営の傍ら、イベント「スマアド」の主催なども務める。19年のYouTubeチャンネル開設から、フィッシャーズのシルクロードなど、YouTuberやストリーマーへのコーチングにも取り組む。今ハマっているものはカードゲーム(ポケカ、MTG)。
【前編の記事】
【前編】「自分のやってきたことを記録に残す 改めて大事と実感」日本人初のスマブラコーチ Crazy Raccoon カイトさんに聞く キャリアと仕事
https://esports.bcnretail.com/column-interview/interview/250320_006155.html
普段は仕事と掛け持ち 土日はイベント主催 応援にも足を運ぶ
──今の簡単な一日の流れを教えてください。
カイトさん(以下敬称略) 普段はシステムエンジニアの仕事がお昼くらいからあります。18時30分には終わって、19時からはカイトスクールのコーチングの仕事です。自宅に来てもらって3時間くらい指導します。
そして21時~23時には、さらにオンライン指導も行います。それは一人1時間くらい。塾や家庭教師に近いので、やっぱり学校や仕事が終わった人たちに教えるというイメージです。たまに昼に教えることもありますが、土日もイベントへの参加とかで忙しかったりしますね。
──土日のイベントについて。
カイト 月に数回ほど主催イベント「スマアド」っていうのを開いています。いつも40人くらいが来てくれるんですけど、結構好評なんですよ。
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カイト あとは、篝火、ウメブラといった有名イベントは特にそうですけど、スクールのメンバーが出場している試合には応援に行ったりするから、土日もなんだかんだ予定が入りますね。
──大変ですね。
カイト 確かにそうですね。あとはよく「何してるかわからない人」って言われます(笑)。仕事していたり、コーチングしていたりいろいろしているから。もちろん人間なので「面倒だな」と思うことがありますけど、人と話していると自然と時間も早く過ぎるし、やっぱり楽しいですよ。本当にこれだけの人に恵まれてありがたいと感じます。
ティーチングではなくコーチング 自分の好きな分野を教えられるのはやっぱり面白い
──今「楽しい」という話がありました。ほかにコーチをしていて面白いところは。
カイト やっぱり教える側なので、メンバーたちは肯定的で積極的。変なストレスはないですよね。そして、自分が好きなものを人に教えたり、発信したりできる、ここは単純に面白い。
あとは、彼らの成長がみられるということ。それこそプロ選手を倒してしまうレベルに育ったメンバーもいる。2000人規模の大会で予選を突破してトップ100くらいに入った。そういう時も喜びを感じます。逆にメンバーが負けちゃうと悔しいですよ。
──逆に苦労するところは。
カイト これまでの人生を振り返ると、やっぱり人間関係が一番ストレスになりがち。そのせいで挫折してしまったことも何度もあったから、難しいのはそこですね。
基本、お互いリスペクト持って接しようと思うんです。でも成績ってすぐよくなるわけじゃないし、育ち方も人それぞれ。どういう人となりなのかを理解しないと最良の指導法は見つからないですよね。
ティーチングではなくコーチングなので、寄り添うところは寄り添う、しっかり言わないといけない時は言い回しに気を遣って言う、こういうところは意識し、メンバーの力になれるようにと、常日頃心がけています。
早くからゲームに触れるのは大事 イベントに足を運ぶことがモチベーションにもつながる
──eスポーツ選手を目指すのに大切なことは。
カイト まず「ゲームの運動神経」を身に付けることですね。
──ゲームの運動神経…ですか?
カイト 幼いころからバスケをしていた人だと、手元を見なくてもドリブルができる。それってゲームも同じです。
「Aボタンを押したからジャンプする」という理屈以前に、指が動く。それは子どもの頃からゲームに慣れ親しんだからですよね。スマブラに慣れてる人は手元を見ませんから。早い段階からゲームに触れるのは大きいと思います。
──ではeスポーツ業界を目指す人に伝えたいことは。
カイト たくさん対戦する。もちろんそれでもいいと思います。でもやっぱり、休みの日に大会やイベントに足を運ぶっていうのが重要なんじゃないかな。
──自分でその場に行くということですか。
カイト そうです。そこで感じたことや経験したことって、結局自分の気持ちの部分に作用すると思うんです。
自分もある大会に参加した時のことを覚えてますもん。ただの体育館で全然豪華じゃなかったけど、すごい有名な大会でした。感動したんですよ。動画で見た人とかいたから。その人の服装まで鮮明に記憶に残っています。
今だったらメジャータイトルならイベントスペースもしっかりしているでしょう。そういう現地の感動を味わったら、モチベーションが絶対上がるし、翌日の行動力も全然違うと思いますよ。
あとは英語(笑)。海外の大会に行ったとき、選手たちと上手く意思疎通が取れず深い話ができなかった。「このキャラはどう思う?」とかね。学生時代は「何で日本人なのに英語なんてやらなきゃいけないの」なんて思ったこともあったけど、学校で学べるものはしっかり学んでおいたほうが良いですね。
スマブラは「続けて苦にならない環境づくり」から始める
──特にスマブラで強くなりたい人に伝えたいことは。
カイト とにかく試合数を重ねること、というのはよく言われますが、「苦にならず、楽しみながらスマブラできる環境を整える」ってことですかね。
例えば、対戦相手をいつも探していたら、それだけでもう労力がかかる。だから理想は、用事から帰ってきたらもう対戦が始まっていて、そこに「じゃあ俺も」ってできる環境。俺も強くなりたくて東京まで来ました。無理やり一人暮らししてるスマブラプレイヤーの家に居座ってね(笑)。環境を変えればやらざるを得ませんから。
でも今はオンライン環境もあるから、まずはそこで対戦できる友だちをつくればいいと思います。
──ありがとうございました!
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外部リンク
カイトさんのnote
https://note.com/leal_hound1001

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