大会レポート
2024.04.22
タイピングを“やり込んだ”人たちの頂上決戦! 速さだけで勝てない競技をレポート
- 大会/イベント
3月9日に日本テレビ社屋にて、タイピングの速さと正確さを競い合う大会「REALFORCE TIPING CHAMPIONSHIP 2024(RTC)」が開催されました。RTCはプレミアムキーボードREALFORCEシリーズを販売する東プレが主催。今回で5回目となります。2月6日に第1回オンライン予選、2月13日に第2回オンライン予選を行い、それぞれの予選でローマ字入力の上位6人、かな入力の上位2人、計16人がオフラインの本戦へ進出します。オンライン参加者は1万2495人が参加しており、注目の高さが伺えます。
速さ&正確さでタイピング勝負
大会はシングルエリミネーション方式のトーナメントで、対戦型タイピングソフト『Weather Typing 4.3(RTC2024Ver.)』を使用。10ワードを先に打ち切った選手がラウンド獲得となります。準決勝まではBO5(3勝勝ち抜け)で、決勝戦のみBO9(5勝勝ち抜け)となります。
速さと同時に正確性も求められており、どちらかが10ワード打ち切った時点で、正確性が95%に到達しているかどうかで勝敗が決まります。どちらかが94%以下となった場合は、10ワード先に打ち切ったとしても正確性が優先され、95%以上の選手が勝利となります。どちらも95%以上、もしくはどちらも94%以下の場合は10ワード打ち切った選手の勝利となります。
対戦時に使用される課題のワードは、四つのテーマから出題されます。1戦目は運営が選択し、2戦目以降は敗北した方が選択ができます。テーマは、オールジャンル、ライフ、旅行、日テレの4種類。出題されるテーマは大会前にダウンロードして確認や練習することができます。ただ、テーマごとに100以上の単語があり、前半と後半で組み合わせが毎回変わるので、キー入力の速さ、正確性と同時に、出題された言葉を瞬時に判断し、無意識で入力できるレベルまでやり込む必要があります。
これまでの4大会はすべてmiri選手が優勝しており、今回は5連覇を果たせるか、もしくは新王者が生まれるのかに注目です。大会では、miri選手は順調に2回戦に進出。そこで対戦相手として立ちはだかったのが、前回の決勝戦で対戦した くわな選手です。いずれの試合もギリギリの展開でしたが、今回はストレートでくわな選手が勝利! 同じ2回戦で注目となったのは三山羊選手とmuller選手の対決。数少ない かな入力プレイヤー同士の対決では、三山羊選手が見事、勝利を収めました。
決勝戦は、絶対王者miri選手を下した くわな選手とかな入力の希望の星である三山羊選手の対決です。かな入力は、ローマ字入力に比べて、キーを押す回数が少なくなります。
例えば「リアルフォースタイピングチャンピオンシップ」と入力するには、
ローマ字入力:「riarufo-sutaipingutyanpionnshippu」(33回)
かな入力 :「りあるふぉーすたいぴんぐちゃんぴおんしっぷ」(28回)
と、打ち込み回数に差があります。
かな入力で英数字を入力する場合は変換や特殊入力が必要となるのですが、それでもかな入力の方が押すキーの数が少ないので、理論上は速度が出やすいと言えます。入力自体の速さが上回っていても、入力文字数によって、ローマ字入力がかな入力の速度に追いつかない場合があるわけです。
ところが、かな入力は入力する文字数が少ないために、精度が落ちやすい、ミスした場合にリカバリーしにくいと言う弱点があります。「リアルフォースタイピングチャンピオンシップ」で1文字ミスすると、変換も含めてローマ字入力は1/34のミスとなり、正確性97%をキープできますが、かな入力では1/26となり、96%ギリギリとなってしまいます。なので、ワードを打ち切りやすいかな入力と正確性のリカバリーがしやすいローマ字入力の対戦というところも見所となります。
決勝戦は、くわな選手が正確性を重視し、95%キープを目指していきます。三山羊選手がワードの打ち切りで先行しても、くわな選手が95%以上をキープしているため、10ワード目を打ちきれないと言う場面もありました。しかし、95%をキープするのはやはり難しく、崩れてしまったところに三山羊選手が10ワード目を取りきる場面が出てきます。
最終的にはくわな選手も速度重視に切り替えますが、三山羊選手には追いつかず、三山羊選手が5-3で勝利しました。先述した通り、これまでの4大会はローマ字入力のmiri選手が優勝していたので、三山羊選手は初の戴冠となり、かな入力プレイヤーの初優勝となりました。
競技性を高めるルール
大会を最後まで観ていて、タイピングの日本一を決める大会において、正確性のルールがあるところが、競技性を高めていると感じました。
単純に打鍵の速さだけを問うのであれば、それは誰の足が一番速いのかという、フィジカルに依存した記録会になってしまいます。そこに正確性のルールを加えることで、相手の動きや作戦を考慮しながら戦う必要が出てきます。
こうした駆け引きによって、レースとしての見ごたえが増しているわけです。さらに、多くのタイピングの大会では、かな入力とローマ字入力は部門が分かれて、それぞれで優勝者を決めています。そうした中で、どちらものタイプでも参加でき、同じ土俵で対戦しているのも、このルールがあるからでしょう。
技術的にも1ミスした場合、ミスの場面から打ち直さなければならない中、そのまま次のキーを打ち続けてしまうと、ミスのカウントが一気に増えてしまいます。ミスしてすぐに打ち直しをすると1ミスですが、そのまま気づかずに5文字打ち続けてしまうと5ミスのカウントとなります。ミスをしたら指を止め、しっかりと打ち直しができるのかも、正確性を高めるためには欠かせない技術となります。
今大会でいえば、あと1ワード打てば10ワード打ち終える場面で、自分の正確性が94%以下だったケースを想定すると、わかりやすいかもしれません。このとき、追いかけてくる相手の正確性が95%以上だったとしても、94%以下になる可能性を見据えて、自分は最後の一文字を打ち込むのを待つ、という選択肢が生まれます。自らは最後のワードを正確に打つことで正確性を95%に近づけつつ、相手のミスが94%以下になった瞬間に、先に10ワードを打ち切る以外に勝ち筋が無いからです。
相手からしてみても、相手が10ワード打ち切れていない状態ではあるものの、こちらが94%以下になった瞬間に試合が終わってしまうのでミスはほぼ許されず、かといってあまりにも安全に打っていると、相手もミスなく打ち込む時間が生まれ、正確性を回復されてしまうリスクがあります。どのプレイヤーも相手のミスを誘発するプレッシャーを与えるくらいの速度は出せるので、それに負けずに正確に打てるほどのメンタルの強さが必要となる試合と言えます。
4連覇していたのは女性プレイヤー
ローマ字入力とかな入力が真正面で対戦できるルールであると同時に、女性が活躍できる大会であることもRTCの魅力です。今大会では惜しくも2回戦で敗退となってしまいましたが、これまで4連覇してきたmiri選手は女性プレイヤーです。
eスポーツは、老若男女、障害の有無を問わず対戦できるのが魅力としていながらも、やはり女性プレイヤーは人口が少なく、大会で結果を残すことがほとんどできていませんでした。そんな中、miri選手が絶対王者として君臨できていたのは、eスポーツの本質を実証していたように感じます。大会で使用されているのはタイピングゲームではありますが、タイピング技術自体は、さまざまな仕事で使うことが多く、自然と訓練されていると言う状況も追い風になったと思います。
決勝トーナメントにmiri選手以外の女性プレイヤーはseina選手のみだったので、まだまだ女性プレイヤーの人口は少ないですが、多くのeスポーツ女性プレイヤーの希望となります。ちなみにseina選手は中学2年生。職業的にキーボードを操る選手が多い中、勝ち残っている点が、eスポーツは年齢差があっても十分戦えることを示したと言えます。
PCに触れたことがある人であれば、RTCに出場している選手の打鍵の速さと正確性の高さはすぐにわかります。その点においても観戦向きのeスポーツと言えるので、興味がある人は一度、動画を観て欲しいです。(ライター・岡安 学)
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外部リンク
REALFORCE TYPING CHAMPIONSHIP 2024
https://www.realforce.co.jp/events/202402_typing-championship/