インタビュー
2025.03.20
【前編】「自分のやってきたことを記録に残す 改めて大事と実感」日本人初のスマブラコーチ Crazy Raccoon カイトさんに聞く キャリアと仕事
- 大会/イベント
【ゲームの進路相談室・第11回 前編】eスポーツ・ゲーム業界で活躍する人の足跡をたどり、将来の夢を叶えるためのヒントを提供する「ゲームの進路相談室」。今回は、スマブラ界隈では「カイトスクール」でおなじみ、Crazy Raccoon所属のスマブラコーチ カイトさんに、これまでのいきさつや、eスポーツ業界で活躍を目指す学生・生徒に伝えたいことなどを聞いてみました。
(取材・文/寺澤克 写真/松嶋優子)

Profile
カイト / Kaito
日本人初のスマブラコーチ。埼玉県深谷市出身。1987年生まれ。VGBootCamp、CJE Sportsを経て現在はCrazy Raccoon所属。会社員として働きながら、各地のスマブラDXの対戦会などに参戦。2017年からは初のスマブラプロ aMSa選手のコーチに就任。19、23年にはSmash Ultimate Summitにコーチとして招待。ShogunさんやProtoBanhamさん、にえとのさん、うめきさんなどに指導。スマブラ塾「カイトスクール」運営の傍ら、イベント「スマアド」の主催なども務める。19年のYouTubeチャンネル開設から、フィッシャーズのシルクロードなど、YouTuberやストリーマーへのコーチングにも取り組む。今ハマっているものはカードゲーム(ポケカ、MTG)。
幼少期からゲームに親しむ 高校ではMMOとスマブラ漬け
──これまでのカイトさんの人生について振り返ります。始めて遊んだゲームは?
カイトさん(以下敬称略) やっぱマリオですね。ファミコン~スーファミ時代だったのでスーパーマリオワールドとか、マリオカートとか。
──結構、ゲームには親しんでいたんですね。
カイト はい。新作が出たら気になったものはよくやってました。地元では友だち同士そんな感じでした。
──小学~中学は何をしていましたか?
カイト 小学5年からミニバスを始めて中学もバスケでした。高校からは、ちょっとしっくりこなくて、写真部の幽霊部員になっちゃいました(笑)。
──その間のゲームについてはどうでしょうか。
カイト 埼玉県深谷市の高校に進学したんですが、MMORPGにハマりました。ちょうどオンラインでゲームができるのが画期的ということで流行してましたし、徹夜してしまうこともあったぐらいです。
──スマブラのほうは?
カイト 中学の時が64~DXにかけての時期でした。校内で一番強くて自信があったので、高校になっても、やっぱりDX強い人を探して対戦に明け暮れました。学校終わったら友だちと一緒に家に帰ってスマブラして、土日なら泊りで遊ぶこともありました。ずっと遊んでたら、うちのお母さんが大皿のキムチチャーハンを持ってきてくれて、みんなで食べたこと、今でも思い出しますね(笑)。
そして、今で言う「オフ会」に参加する機会があって、スマブラの世界が広がったのもこの時でした。
初のオフ会で完敗 その後は各地の対戦会に足を運ぶ 大会ではaMSa選手を破ることも
──オフ会参加のきっかけは。
カイト 高校でも一番強かったのですが、ネットで調べた時に「誰かリアルで対戦しませんか」って募集があったんですよ。黎明期だった当時のネット文化では、珍しかったですね。それで行ってみたら、全く知らない人にボコボコにされました。でも、「何このゲームつまんねぇ」とはならず、めちゃくちゃ目が輝いちゃったんですね。良い意味で「何このゲーム…!」って。
──高校卒業後の進路について。
カイト 基本的に「普通は嫌だな」という思いがありました。高校も必死に勉強して商業科に入りましたからね。だから手に職が付けられるようなシステム開発系の専門学校に進学しました。
──スマブラのほうは相変わらずやり込んでいたんですか?
カイト もちろん。初めてのオフ会で負けたコーラルさんって人が所沢出身で、住む場所が近かったので、各地の対戦会やオフ会に連れていってもらいました。とてもお世話になったのと同時に、腕を磨いたのもそこだったから、やっぱりオフ会が俺のスマブラ人生のターニングポイントかなって思いますね。
ネットもそれほど栄えてはいなかったし、オフ会や対戦会のリアルなコミュニティがメインな時代でした。そこでいろいろな人と知り合って、界隈では顔も広くなりました。
──なるほど。卒業後は就職ですか?
カイト 就職して、ヘルプデスクのコールセンターをしていました。当時は「eスポーツ」なんて言葉もありませんでしたからね。32歳頃まではずっと仕事をしていましたね。
ただ、その中でもスマブラはプレーを続けていて、大会に参加することもありました。各地で知り合った界隈の人たちの中では、自分の強さをある程度証明できていたから、正直、そんなに出てないですが。目立つ戦績と言えば2013年に行われた関東スマブラ大会「Battle GateWay」の第一回大会で優勝していること。今では40回以上の開催を数える大会で、その時は決勝で、aMSa選手を倒して優勝しました。aMSa選手はこの後、初のスマブラプロとしても知られるようになる選手です。
aMSa選手の熱意に応えコーチに 結果も出始めコーチングに本腰
──コーチをするようになったきっかけは?
カイト そのaMSa選手が、わざわざ海外から「コーチをしてほしい」と電話をくれて、その熱意を受けて始めました。それは2017年末のことでしたが、以前たまたまアドバイスをしたことがあって、それが本人にかなり刺さったみたいなんですよ。
海外ではコーチが付くことがその当時すでに一般的でした。招待大会のSmash Summitで優勝を重ねていたHungrybox選手が、コーチを付けていたという話を聞いたらしくて、aMSa選手はすぐに電話をしてきてくれたんです。
で、俺がコーチをしてから、スマブラの世界ランクもトップ10入りするぐらいまで上がったんですよ。

「2017年末にカイトさんのコーチング受けてからずっとTop 10」とaMSa選手自身もX上で感謝をつづる
(画像はaMSa選手のXアカウントから引用)
──目に見えて結果が出始めたんですね。
カイト そうなんです。それである日、界隈の配信に出演した時にも「カイトさんYouTubeチャンネルやらないんですか」って反応が多くて。いざチャンネル開いたら、動画上げてないのに8000人くらいの登録者が集まってくれて、そんなに需要があるんならってことで、aMSa選手のコーチングとYouTubeに力を入れていこうと思いました。
そこからはもうコーチングだけに集中しました。月5万円くらいで生活していた時もあり大変でしたが、今は、ソーシャルゲームなどのゲームプランナーやシステムエンジニアの仕事をしながら「カイトスクール」を運営するまでになっています。
──Crazy Raccoonに加入しましたが、その点については。
カイト やっぱり、いろいろと自分なりに努力した結果、注目されるようになった、これが大きいと思います。
最近ではYouTubeでフィッシャーズのシルクロードさん、エスポワール・トライブさん、まふまふさんといった有名人にもコーチングする機会を得られました。
元々はシルクさんからの一本の電話に出たことが始まり。本当に偶然出ることができたんですけど、そこからいろいろな人とつながりを持つことができました。

まふまふさんにもコントローラーをプレゼントするなど、スマブラを世に広める活動に注力(画像はカイトさんのXアカウントから引用)
──葛葉さんともコラボしましたね。
カイト はい。あれも葛葉さんが俺のことを知ってくれていて、CRのおじじさんに「カイトさんを紹介して」と頼んだことから始まりました。
今までやってきたことから、ようやくつながりが生まれてきたという段階。自分のやってきたことを記録として残す、発信するっていうのが改めて大事ということを感じましたね。
後編ではスマブラで強くなりたい人やeスポーツ業界を目指す人に向けたメッセージなどを掘り下げます。3月21日掲載予定。
【後編の記事】
【後編】「続けていて苦にならず楽しめる環境づくりが大切」スマブラコーチの草分け的存在 Crazy Raccoon カイトさんに聞く キャリアと仕事
https://esports.bcnretail.com/column-interview/interview/250321_006162.html
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外部リンク
カイトさんのnote
https://note.com/leal_hound1001

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