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2021.03.25

「eスポーツ部」とは?高校生が学校でeスポーツを練習…新しい時代の部活の形

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 eスポーツは、ここ数年で娯楽や文化の新しい形として定着しつつあります。そんな流れをくんで、高校の部活動としてもeスポーツが導入される例が増えています。保護者の中には、学校でゲームをすることに疑問を感じることもあると思うので、ここでは、高校のeスポーツ部がどのような活動をしているのかを説明していきます。

男女4人の学生が並んでいるイメージ

eスポーツ部とは?

 高校における「eスポーツ部」とは、高校でeスポーツに取り組むための部活動のこと。サッカー部や野球部などと同じ位置づけです。現在、eスポーツ部が存在するのは一部の高校のみですが、後述する理由から次々と増えることが予想されます。

企業が福利厚生などの一環として「eスポーツ」を活用する場合も「eスポーツ部」と定義する場合がある

 なお、「eスポーツ部」という言葉は、企業がレクリエーションの目的で設けているeスポーツ部を指すこともあります。こちらの場合、会社のPRや大会に出て勝利を目的とするケースもありますが、基本的には社員の福利厚生の一環であるこが多いようです。

 この背景には、ゲーム自体が年齢性別を問わず文化として浸透している上に、eスポーツも新たな娯楽として定着しつつあることがあげられるでしょう。社会人向けのAfter6リーグという交流の場ができていることを見ても、eスポーツが人同士の親交を深めるツールとして機能していることがうかがえます。

eスポーツ部を部活動の一つとしている高校

 高校のeスポーツ部に話を戻しましょう。ゲームやeスポーツは文化として発展しつつありますが、教職員や保護者の中には「学校でゲームをするのはどうか」という声があるのも実情です。

 そんな中、eスポーツ部を立ち上げた東京都内のある高校の先生は、「高校生向けのeスポーツ大会が開催されるようになり、文部科学省も後押ししているという状況が生まれて風向きが変わった」と語っています。保護者にも納得してもらえるように、練習時間を制限することなどに注意を払っているそうです。

 生徒たちも単純にゲームを楽しむのではなく、活動を通じた生徒同士のコミュニケーションや、目標に向かって知恵を出し合うことの重要性など、部活動としてのeスポーツを理解できている例が多いようです。

 岡山県の岡山共生高等学校では、勉強の成績が落ちたらeスポーツ部の活動が批判を受けるだろうと考え、部員全員で勉強に取り組んだ結果、全部員の成績がアップした、という話もあります。詳しくは、以下の記事を参考にしてくだい。

「eスポーツで長所を伸ばし、人間力を身に付けてほしい 岡山共生高等学校 eスポーツ部」

eスポーツを部活動に取り入れている高校が増えている理由

ヘッドセットを着けた人物の後ろ姿


 次に、高校の部活動でeスポーツ部が増えている理由に着目していきましょう。

eスポーツが社会に認知され競技として定着してきた

 世界で「eスポーツ」という言葉が使われるようになったのは2000年代ですが、日本は近年まで「eスポーツ後進国」と言われてきました。この背景には、「ゲームは娯楽であり、勉強や仕事の妨げになる」というイメージがあったと考えられています。また、日本では家庭用ゲーム機の普及率が高く、PCでゲームをする傾向が海外より低いことや、そもそもPCの普及率が低いことを遅れの要因とする意見もあります。

 さらに日本社会では、「ゲームがスポーツである」という認識も薄いことや、日本ではeスポーツの大会に高額賞金を出すことに対する法的な壁があることも、eスポーツの普及が遅れた理由とされています。

 しかし、2010年代以降は「eスポーツ元年」という言葉が使われるようになり、国や自治体、企業などがeスポーツを産業として重視するように。それによってeスポーツの普及を掲げる企業や団体が増え、日本で大会が開催される機会が増加しました。

 その中には、高校生を対象とする大会もあり、活躍の場が用意されたことで高校にeスポーツ部が増えていきます。実際に、2024年の調査では過去3年間でeスポーツ部がある学校の数は18倍にもなっており、数値的に増加傾向にあることは明確です。

 さらに、高校生を含むいわゆる「Z世代」の若者たちが、eスポーツをプレイすることや配信などで観戦することに熱狂していることもあって、高校生がeスポーツに関わることはすでに一般化しています。

 近年は高校の選択理由に「eスポーツ部があること」をあげる生徒もいるため、急激な少子化が進む日本では学校存続の手段としてもeスポーツ部が増えていくことも考えられます。

eスポーツを通して得られるメリットがある

 ゲームには、「一人で部屋にこもって長時間遊ぶ」というイメージがつきものかもしれません。しかし、高校のeスポーツ部はそうしたイメージとはまったく異なります。団体行動なのでコミュニケーション能力が要求されますし、チームのスキルアップや勝利するために知恵を出し合うことが欠かせないからです。

 また、結果が出れば成功体験をメンバーと共有できますし、上手くいかなくても、その困難を乗り越えようとする姿勢が育まれます。

 保護者にとっては、「ゲームばかりすると困る」という気持ちもあるでしょうが、部活動は学校の監督下で行われるため、むしろ安心な面もあるでしょう。

 また、保護者の方々が心配される点に、将来性の不安もあるかと思います。確かに以前はeスポーツに関連する就職先は多いとは言えませんでしたが、近年eスポーツは右肩上がりの産業として注目を集めています。実数値として、2019年に約61億円であった日本のeスポーツ市場は、2025年には約3倍の200億円に成長する見込みです。この成長は今後も継続すると見込まれており、市場規模が大きくなるほど関連する職業に就く人も増加することから、就職先として決して需要が小さい産業ではありません。

eスポーツ部で練習されている主なゲームタイトル

ゲームコントローラーを持つ人物のイメージ


 ここからは、高校のeスポーツ部で練習することが多いゲームタイトルを簡単に説明していきましょう。

リーグ・オブ・レジェンド(League of Legends)

リーグ・オブ・レジェンドのキービジュアル


 リーグ・オブ・レジェンドはMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)に分類されるゲームです。5人でチームを組んで敵陣を攻略するゲームで、チームワークが重要になります。

 NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権とSTAGE:0という二つの高校生向けのeスポーツ大会でも、種目の一つとして採用されています。

 世界のeスポーツ大会でもしばしば種目に選ばれていますし、アクティブプレイヤーの多さ、eスポーツ配信の視聴時間の長さなどから、とても人気が高いタイトルであることが知られています。

公式サイト:League of Legends

ポケモンユナイト

ポケモンユナイトののキービジュアル
c2021 Pokemon. c1995-2021 NintendoCreatures Inc.GAME FREAK inc.
c2021 Tencent.


 ポケモンユナイトは、公式サイトではチーム戦略バトルゲームとジャンル付けされており、一般的な分類ではMOBAに含まれます。

 双方5人ずつがエントリーする対戦方式で、野生のポケモンを倒して獲得したポイントを、相手のゴールに入れることで得点を競います。

 世界的に高い認知度をもつ「ポケットモンスター」を扱っていることから、非常に多くのプレイヤーに楽しまれています。「ユナイト=団結する」という名称の通り、チーム内の連携が勝敗を大きく左右するので、高校生の部活動として適したタイトルでもあります。

 また、2022年から「全国高校ポケモンユナイト選手権大会(別名:ポケモンユナイト甲子園)」が開催されていることも、このタイトルが高校の部活動でプレイされる大きな動機となっていると言えるでしょう。

公式サイト:ポケモンユナイト

ロケットリーグ

ロケットリーグのキービジュアル
c 2015-2023 Psyonix LLC.Rocket League、
Psyonixならびにすべての関連するマークやロゴはすべて、
Psyonix LLCの登録商標または商標です。
複製・無断転載を禁じます。その他のすべての商標は、それぞれの所有者に帰属します。


 ロケットリーグは特殊な車を用いてサッカーをするタイトルで、制限時間内に多く得点したチームが勝利します。シンプルでわかりやすいことから初心者でもなじみやすく、奥が深いので上達する喜びを感じられる特徴があります。過去に全国高校eスポーツ選手権でも採用されていた種目で、3人で一つのチームを組んで対戦します。

公式サイト:ロケットリーグ

フォートナイト

フォートナイトのキービジュアル


 フォートナイトはジャンルではTPSに分類されるシューティングゲームで、建物やトラップを作成できるクラフト要素が盛り込まれたタイトルです。

 ゲームとしてはバトルしなくても楽しめる要素を持っていますが、高校生向けeスポーツ大会の一つであるSTAGE:0では、2人でチームを組む方式で、バトルロイヤルとゼロビルド部門が採用されています。

 世界的にも競技者数が多いタイトルで、Fortnite World Cupという海外の大会では4000万人を超えるプレイヤーが参加した記録もあるほどです。

公式サイト:フォートナイト

VALORANT

VALORANTのキービジュアル


 VALORANTは高い競技性をもつ対戦型のタクティカルシューターゲームです。銃器類を使うのでエイムの正確性も重要ですが、超能力を併用することや、チームプレイが重視されることなどで戦略的な要素を楽しむこともできます。5対5のチーム戦なので部活動向きのタイトルでもあります。

 アメリカのライアットゲームズが開発したタイトルですが、2022年の公式大会で日本のプロeスポーツチームが3位入賞したこともあって、国内でも高い人気を誇っています。

 また、VALORANTはNASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手とSTAGE:0の両大会で種目として採用されていることもあり、高校生がeスポーツ部で練習することが多い種目でもあります。

公式サイト:VALORANT

ストリートファイターシリーズ

ストリートファイター6のキービジュアル


 ストリートファイターシリーズは日本のカプコンが開発・リリースしている人気タイトルで、1980年代から続いている格闘ゲームの代表作として、世界各地のユーザーに愛されています。

 使用するキャラクターの特性を生かして対戦相手を倒すという点では非常にシンプルですが、相手との相性や戦い方を見ながら戦術を変える必要もあるため、奥が深いタイトルでもあります。

 また、練習によって技を磨くほど強くなれる点でもやりこみ要素が強く、eスポーツの種目としても世界中で採用されています。

公式サイト:ストリートファイターシリーズ

ブロスタ

ブロスタのキービジュアル


 ブロスタはバトルロイヤルやデュエル、賞金稼ぎやノックアウトなどの複数のモードが楽しめるアクションゲームです。モバイルゲームなのでスマートフォンで楽しめますし、1ゲームが3分程度で終わるので、休憩時間などでもプレイできる気軽さが魅力です。

 2025年のSTAGE:0で種目として採用されており、ここでは3人1組で出場するエメラルドハントモードで勝敗を競います。エメラルドハントモードでは、鉱山からエメラルドを集めたり、敵を倒してエメラルドを奪ったりして、制限時間まで集めたエメラルドを守ることを目的とします。

公式サイト:ブロスタ

クラッシュ・ロワイヤル

クラッシュ・ロワイヤルのキービジュアル


 クラッシュ・ロワイヤルは、フィンランドのゲーム会社が2016年にリリースしたオンラインカードバトルゲームです。自軍のタワーを守りつつ、制限時間内に相手のタワーをより多く破壊することが目的です。また、キングタワーを破壊すれば時間が残っていても勝利が確定します。

 2025年のSTAGE:0では3人1組のチーム戦が採用されています。攻守の判断やキャラクターのカードデッキへの工夫など、戦略的に考える面が強いうえにリアルタイムバトルならではの興奮があるのもこのタイトルの魅力です。

公式サイト:クラッシュ・ロワイヤル

オーバーウォッチ2

オーバーウォッチ2のキービジュアル


 オーバーウォッチ2は、近未来を舞台とするチームアクションゲームです。「ヒーロー」と呼ばれるキャラクターが個別の能力をもっているので、いかにその能力を駆使するかが勝敗を左右します。エイムの正確性を要求されるFPSの楽しみと、役割分担して勝利を目指すMOBAの要素があります。

 2025年のSTAGE:0で種目として採用されているタイトルです。5人でチームを組んで対戦するので、チーム内の連携とヒーローごとの特徴を生かした戦い方が勝利のカギとなります。

公式サイト:オーバーウォッチ2

eスポーツ部が出場・優勝を目指す主な高校生向けの大会

大きなモニターを見て興奮する観衆のイメージ


 この項目では、高校性のチームを対象とするeスポーツ大会を紹介します。なお、必ずしも学校に公認された部活動でなければ参加できないわけではなく、eスポーツ部がない学校の高校生も参加可能です。ただし、同じ高校に在学していることなどを条件とする大会もあるので、詳細は各大会の情報を参照してください。

NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権

NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権の様子


 NASEF JAPAN(特定非営利活動法人国際教育eスポーツ連盟ネットワーク日本本部)が主催している高校生向けのeスポーツ全国大会です。

 2024年の大会では、Apex Legends、フォートナイト、ストリートファイター6、リーグ・オブ・レジェンド、VALORANTの6種目が採用されています。

 2024年には6月から8月にかけてエントリーが行われ、9月以降にオンライン予選が実施、決勝は12月、というスケジュールでした。

 2024年大会では、参加高校数573校、チーム数976と発表されており、全国規模の高校生大会として多くの高校生の目標となっています。

関連記事:LoL最強高校はどこだ! 全日本高e決勝大会、東西通信制対決の行方

公式サイト:NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権

STAGE:0

STAGE:0の様子


 STAGE:0(ステージゼロ)は高校生のチーム同士が対戦して日本一を争う大会として、2019年から開催されています。2024年に開催された大会では、出場チーム数2322、出場者数は7692名と報告されており、高校生が出場する大会として過去最高を記録しています。

 また、ライブ配信の総視聴者数も約1393万人と好調で、コンテンツとしてもすでに非常に大きな存在です。

 なお、2025年の大会では、ブロスタ、クラッシュ・ロワイヤル、フォートナイト、オーバーウォッチ2、リーグ・オブ・レジェンド、VALORANTの6種目が採用されています。

関連記事:STAGE:0 2024 フォトナ部門、世界で活躍する高校生も出場!? 全国大会グランドファイナルレポート

公式サイト:STAGE:0

全国高校ポケモンユナイト選手権大会

全国高校ポケモンユナイト選手権大会の様子


 2022年から開催されており、「ポケモンユナイト甲子園」という別名でも知られています。「高校生たちに、ひと夏の思い出を作ってもらいたい」という趣旨で、日本テレビ放送網株式会社と株式会社ポケモンが創設した大会です。

 学校単位でチームを組んで地区予選を勝ち抜き、全国大会への出場や優勝をかけて戦うシステムが組まれています。初年度である2022年には少なかった出場チームも増加傾向にあります。

関連記事:特殊ルールで見ごたえある「ポケユナ甲子園 2024」決勝大会! 仲間と一緒に出場するために猛勉強して受験

まとめ

 高校の部活動で増えているeスポーツ部についてまとめました。生徒たちがゲームに熱中することに不安を覚える保護者も少なくないと思いますが、高校のeスポーツ部はコミュニケーションを取り合って成功体験を共有したり、困難な問題にチームで取り組んでいく姿勢を育てたりするメリットがあります。

 日本では他のスポーツと同様に部活動として定着しつつありますし、学校説明会などで体験会を開催している学校もあるので、この機会にぜひ興味を持ったらeスポーツ部の活動に触れてみてください。

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